第9講 完全な文と不完全な文|欠所を見つける|英文の原理
― 欠所を見つける
第II部で扱う that・what・関係詞・疑問詞の識別は、すべてこの一点にかかっています。節の中に「欠けている場所」があるか、ないか。
第I部の締めくくりです。ここで身につける「完全・不完全」という見方は、第11講以降で that を識別し、what と that を分け、関係代名詞と関係副詞を見分ける――そのすべての決め手になります。難しい話ではありません。その節を独立した文として読んだとき、S・O・C のどれかが足りないかどうかを見るだけです。
1. この講で解決する読み間違い
どちらも the news that ... ですが、(A) の that は主格の関係代名詞、(B) の that は目的格の関係代名詞。訳し方も、that を省略できるかどうかも違います。
見分ける材料は意味ではなく、that の後ろに何が欠けているかです。(A) の surprised everyone は主語が無い(誰が驚かせたのか=主語が欠所)。(B) の everyone expected は目的語が無い(何を予期したのか=目的語が欠所)。
(A) みんなを驚かせたニュース/(B) みんなが予期していたニュース
2. 原理 ― 欠所があるか、ないか
節を独立した文として読んだとき、動詞が要求する S・O・C のどれかが欠けていれば「不完全」、すべて埋まっていれば「完全」。
何が「あるべき」かは、その節の動詞の文型(第4講)で決まります。
| 動詞のタイプ | そろっているべき要素 | 完全な例 | 欠所の例(不完全) |
|---|---|---|---|
| 自動詞(第1) | S | the bell rang | [S欠] rang loudly |
| be・become(第2) | S + C | she is a nurse | she is [C欠] |
| 他動詞(第3) | S + O | he wrote a poem | he wrote [O欠] |
| give型(第4) | S + O + O | they gave him [O欠] | 目的語のどちらかが欠ける |
前置詞も見ます。the city she comes from [ ] は from の目的語が欠けているので不完全です。欠所は動詞の後ろとはかぎらず、前置詞の後ろにも現れます。
なぜ関係詞・疑問詞の後ろは不完全になるのか
関係代名詞(who / which / that)や what、疑問代名詞(who / what / which)は、節をつなぐと同時に、その節の中で S・O・C のどれかを兼ねています。一語が二役なので、本来その要素があるはずの場所が空く。だから後ろが不完全になります。一方、接続詞(that / because / when)や関係副詞(when / where / why)は「つなぐ」役目だけなので、後ろは完全なままです。
3. 判別の手順
- 節の始まり(接続詞・関係詞・疑問詞)から、節の終わりまでを区切る。
- その節を、頭の語をいったん外して独立した文として読む。
- 動詞の文型を確認し、S・O・C・前置詞の目的語がすべて埋まっているかを見る。
- 埋まっていない場所(欠所)があれば不完全、なければ完全。
- この結果を、第11〜19講の識別に使う。不完全→関係代名詞・what・疑問代名詞/完全→接続詞・関係副詞。
この手順も、当てはめれば答えが出る装置ではありません。ステップ3で「この動詞は目的語を要るのか」を判断するには、動詞の語法(自動詞・他動詞)を知っている必要があります。ただ、「意味はどうか」ではなく「どの要素が欠けているか」を探すという具体的な作業に変わるので、確かめるべきものがはっきりします。
4. 例文の解析
the scientist who discovered the vaccine
- 独立文
- [ ] discovered the vaccine ― 主語が無い
- 判定
- 不完全 → who は主格の関係代名詞
そのワクチンを発見した科学者
the book that she recommended to me
- 独立文
- she recommended [ ] to me ― recommend の目的語が無い
- 判定
- 不完全 → that は目的格の関係代名詞(省略可)
彼女が私に勧めてくれた本
the fact that she recommended the book to me
- 独立文
- she recommended the book to me ― S・O すべて揃う
- 判定
- 完全 → that は接続詞(同格)
彼女がその本を私に勧めたという事実
EX 2 と EX 3 は、recommend の後ろに the book があるかないかだけの違い。その一点が、関係代名詞と接続詞を分けます。
the town where I was born / the town that I told you about
the town 〔that I told you about [O欠]〕 … 不完全(about の目的語が欠ける)
- where の節
- I was born(完全)→ 関係副詞
- that の節
- I told you about [ ](不完全)→ 関係代名詞
私が生まれた町/私があなたに話した町
同じ先行詞 the town でも、後ろが完全なら関係副詞、不完全なら関係代名詞。完全・不完全が、関係副詞と関係代名詞を分ける決め手です(第14講)。
I couldn't believe what he said at the meeting.
- 独立文
- he said [ ] at the meeting ― say の目的語が欠ける
- 判定
- 不完全。what は先行詞を含む関係代名詞(第16講)
私は、彼が会議で言ったことが信じられなかった。
what は「先行詞+関係代名詞」を一語で兼ねるので、後ろは必ず不完全になります。完全な節が続いていたら、それは what ではなく that の可能性を疑います。
Who broke the window / where she put the keys
〔where she put the keys〕 … 完全(疑問副詞・場所は副詞なので欠所ではない)
- who
- 主語が欠ける → 疑問代名詞(不完全)
- where
- S・O 揃う → 疑問副詞(完全)
誰が窓を割ったのか/彼女が鍵をどこに置いたか
疑問詞も、代名詞(who/what/which)なら不完全、副詞(when/where/why/how)なら完全。関係詞と同じ原理です(第17講)。
What puzzled the investigators was that the witness described in detail a room that no one else claimed to have seen.
- What節
- [ ] puzzled the investigators ― 主語欠 → 不完全 → what
- was の後ろの that節
- the witness described … a room … ― 完全 → 接続詞(名詞節)
- a room の後ろの that節
- no one … claimed to have seen [ ] ― 目的語欠 → 不完全 → 関係代名詞
捜査員たちを困惑させたのは、その目撃者が、ほかの誰も見たと主張しない部屋を詳細に描写したことだった。
一文に what・接続詞の that・関係代名詞の that が同居しています。それぞれの後ろの完全・不完全を見るだけで、3つとも役割が決まります。これが第II部で繰り返し使う判定です。
5. つまずきやすい形
(1) 「完全・不完全」は語法の知識と地続き
discuss(他動詞・目的語が要る)を自動詞と勘違いすると、欠所の判定を誤ります。the topic that we discussed [ ] は不完全(discuss の目的語欠)。自動詞・他動詞の知識が、完全・不完全の判定を支えています。迷う動詞は、実際の英文で用法を確かめておくと精度が上がります。
(2) 第2文型・第5文型の C の欠けを見落とさない
the person that he became [C欠] は不完全です。become は補語を要求するのに、それが欠けているからです。O だけでなく C の欠けも「不完全」に含まれます。
(3) 副詞の欠けは「欠所」ではない
the reason why he left の he left は完全です。「なぜ去ったか」の理由は副詞的な情報で、文の成立に必須の要素(S・O・C)ではないからです。欠所として数えるのは S・O・C・前置詞の目的語だけ。副詞情報の有無は関係ありません。
(4) 独立文にして読むのがコツ
頭の関係詞・接続詞を外し、節の中だけを一つの文として声に出すと、欠けが見つけやすくなります。that the committee submitted → the committee submitted [ ]。「提出した……何を?」で止まれば、目的語が欠けている=不完全だと分かります。
6. 入試ではこう出る
空所補充で that / what / which / where のどれを入れるかは、空所の後ろが完全か不完全かで決まります。不完全なら what や関係代名詞、完全なら that(接続詞)や関係副詞。この一手で選択肢が半分に絞れます。文法問題で最も出題頻度が高い判断の一つです。
和訳問題でも、同格の that(完全)を関係代名詞(不完全)と読み違えると、訳が根本から変わります。訳す前に、後ろの完全・不完全を確かめる――この習慣が、長文でも安定した読みを支えます。第11講から、この物差しを実際の識別に使っていきます。
7. 確認問題
各節が完全か不完全か、不完全ならばどこが欠けているかを言えるようにしてから開いてください。
(1) the argument that convinced the jury
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不完全(主語が欠ける)。[ ] convinced the jury の主語が無い。that は主格の関係代名詞です。
陪審を納得させた主張
(2) the possibility that the experiment failed
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完全。the experiment failed は S+自動詞で欠けなし。that は接続詞(同格)で、the possibility の中身を説明しています。
その実験が失敗したという可能性
(3) the house which they had lived in for years
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不完全(前置詞 in の目的語が欠ける)。they had lived in [ ]。which は関係代名詞で、in の目的語を兼ねています。
彼らが何年も住んでいた家
(4) I don't know what she wants for her birthday.
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節 what she wants for her birthday は不完全(want の目的語が欠ける)。what は先行詞を含む関係代名詞で、この節全体が know の目的語(名詞節)です。
私は、彼女が誕生日に何を欲しがっているのか分からない。
(5) This is the village where the famous poet spent his final years.
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節 the famous poet spent his final years は完全(S+他動詞+O が揃う)。だから where は関係副詞。「その村で〜過ごした」という場所の情報を加えています(第14講)。
ここは、その有名な詩人が晩年を過ごした村だ。
8. この講のまとめ
| 原理4 | 節を独立文として読み、S・O・C・前置詞の目的語が欠けていれば不完全、揃っていれば完全 |
|---|---|
| 不完全になる語 | 関係代名詞・what・疑問代名詞(つなぐ+節内の要素を兼ねる) |
| 完全になる語 | 接続詞(that ほか)・関係副詞・疑問副詞(つなぐだけ) |
| 欠所の対象 | S・O・C・前置詞の目的語のみ。副詞情報は欠所に数えない |
| 土台 | 動詞の文型(第4講)と自動詞・他動詞の知識 |
第I部はこれで完成です。骨格をつかみ(1〜7講)、かたまりの働きを位置で決め(8講)、完全・不完全で節を測る(9講)。次の第10講で第I部の総合演習を行い、そこから第II部――that をはじめとする識別の実戦――に入ります。
次の講へ
「後ろの欠所」を見る目を鍛える
完全・不完全の判定は、動詞の語法と結びついて初めて速くなります。日本英語塾は担任制のオンライン英語専門塾です。実際の入試英文で、どの節のどこが欠けているかを毎回言語化し、that・what・関係詞の識別を確実にします。
