第8講 かたまりの働きは3つしかない|名詞・形容詞・副詞|英文の原理

英文の原理|第I部 文の骨格をつかむ|第8講
かたまりの働きは3つしかない
― 名詞・形容詞・副詞

英語の複雑さは、無限の文法項目ではなく、3つの働きの組み合わせでできています。どんなに長いかたまりも、名詞・形容詞・副詞のどれかです。

ここまでの7講で、骨格(S・V・O・C)と修飾を切り分ける技術を積み上げてきました。この第8講は、第I部のまとめであり、第II部(かたまりを見抜く)への入口です。伝えたいことは一つ。文の中のどんなかたまりも、名詞・形容詞・副詞の3つの働きのどれかに収まる。この見方が、これから扱う関係詞・不定詞・分詞・接続詞のすべてを貫きます。

1. この講で解決する読み間違い

「この that 節は名詞節ですか形容詞節ですか」と問われて、用法を思い出そうとして固まる。この止まり方は、働きを「位置」ではなく「用語」で覚えていることから来ます。

(A) I know that he is honest. (B) the fact that he is honest (C) He is so honest that everyone trusts him.

同じ that ... honest でも、(A) は動詞 know の目的語=名詞、(B) は the fact を説明=形容詞(同格)、(C) は so と呼応して程度を表す=副詞。働きが違うのは、置かれている場所が違うからです。

かたまりの働きは、中身の形ではなく文中のどの位置にあるかで決まります。名詞が入るべき場所にあれば名詞、名詞のうしろで説明していれば形容詞、それ以外なら副詞。「位置が働きを決める」――これが第II部を通して効く原則です。

2. 原理 ― 3つの働きと、その置き場所

原理 3

文の中のかたまりは、名詞・形容詞・副詞のいずれかの働きをする。どの働きかは、置かれている位置で決まる。

働き 置き場所(=そこにあれば、その働き) 作るもの
名詞 主語・目的語・補語・前置詞の後ろ that節 / what節 / whether節 / 疑問詞節 / 動名詞 / 不定詞(名詞用法)
形容詞 名詞の直後(説明する) 関係詞節 / 同格that節 / 分詞句 / 不定詞(形容詞用法) / 前置詞句
副詞 上記以外(動詞・文全体を説明) 従属接続詞節 / 分詞構文 / 不定詞(副詞用法) / 前置詞句

同じ材料(that 節、不定詞、前置詞句、分詞)が、置かれる場所によって3つの働きを行き来します。だから、覚えるべきは「どの形がどの用法か」という表ではなく、「今この場所には、名詞・形容詞・副詞のどれが入るはずか」という一つの問いです。

位置から働きを決める3つの問い

  1. そこは名詞が入る場所か?(主語・目的語・補語・前置詞の後ろが空いているか)→ 名詞
  2. 直前に名詞があって、それを説明しているか?→ 形容詞
  3. どちらでもないか?→ 副詞

3. 判別の手順

かたまりを見つけたら、その外側を見ます。中身を分析する前に、まず「このかたまりは、文の中でどの位置にあるか」を確認するのです。

  1. かたまりの範囲を決める。接続詞・関係詞・疑問詞・準動詞から始まり、次の骨格要素の手前まで。
  2. かたまりの直前・直後を見る。主語が無い位置なら名詞(主語)、動詞の後ろで目的語が空いていれば名詞(目的語)、名詞の直後なら形容詞。
  3. 骨格の要素として必要かを問う。抜くと文が成立しないなら名詞(骨格の一部)。抜いても文が成立するなら形容詞か副詞(修飾)。
  4. 働きが決まってから、中身を読む。順番を逆にしない。

この手順も、当てはめれば答えが出る装置ではありません。ステップ2で「この位置は名詞の場所か」を判断するには、骨格(第1〜7講)が見えている必要があります。ただ、中身の分析より先に位置を見るという順番にするだけで、「用法を思い出す」という迷い方から抜け出せます。

4. 例文の解析

EX 1|同じ不定詞が3つの働き

To learn a language takes time. / I have a lot of work to do. / He came here to help us.

To learn a language takes time. … 名詞(主語)
I have a lot of work to do. … 形容詞(work を説明)
He came here to help us. … 副詞(目的)
決め手
主語の位置=名詞/名詞の直後=形容詞/骨格が揃った後ろ=副詞

言語を学ぶことは時間がかかる/私にはやるべき仕事がたくさんある/彼は私たちを手伝うためにここに来た。

EX 2|名詞節(主語)

Whether the plan will succeed depends on funding.

〔Whether the plan will succeed〕 depends on funding.
位置
主語 → 名詞の働き(名詞節)
検証
抜くと depends on funding の主語が無くなる=骨格の一部

その計画が成功するかどうかは、資金しだいである。

EX 3|形容詞節(名詞を説明)

The moment when everything changed came without warning.

The moment 〔when everything changed〕 came without warning.
位置
名詞 The moment の直後 → 形容詞の働き(関係副詞節)
検証
抜いても The moment came は成立=修飾

すべてが変わったその瞬間は、前触れもなく訪れた。

EX 4|副詞節(文を説明)

Although the data were limited, the researchers reached a firm conclusion.

Although the data were limited〕, the researchers reached a firm conclusion.
位置
主節の外・文全体を説明 → 副詞の働き(従属接続詞節)
検証
抜いても主節は成立=修飾

データは限られていたが、研究者たちは確固たる結論に達した。

EX 5|動名詞(前置詞の後ろ=名詞)

She improved her writing by reading widely.

She improved her writing by reading widely.
位置
reading widely は前置詞 by の後ろ → 名詞の働き(動名詞)
by reading widely 全体
前置詞句として副詞(手段)

彼女は幅広く読書することで、文章力を高めた。

入れ子になっています。reading は前置詞の後ろで名詞(動名詞)、その by reading widely 全体は動詞を説明する副詞。働きは、そのかたまりを含む一つ外側の位置で決まります。

EX 6|同じ what 節が名詞

What matters most is not the result but the effort.

〔What matters most〕 is not the result but the effort.
位置
主語 → 名詞の働き
中身
What は先行詞を含む関係代名詞(第16講)。後ろは不完全(matters の主語が欠ける)

最も大切なのは、結果ではなく努力である。

働き(名詞・主語)は位置で先に決まります。What の中身の分析は、そのあとで十分間に合います。

EX 7|入試レベル・3つの働きが同居

That the theory remains influential, despite the criticism it has received, suggests that it captures something important about how people actually behave.

〔That the theory remains influential〕, despite the criticism 〔(that) it has received〕, suggests 〔that it captures something important 〔about how people actually behave〕〕.
先頭の That節
主語の位置 → 名詞(名詞節)
despite の句 / the criticism を説明する節
副詞(挿入)/形容詞(関係詞節)
suggests の後ろの that節
目的語の位置 → 名詞
about how…
前置詞句+疑問詞節(名詞)→ 全体は形容詞(something を説明)

批判を受けているにもかかわらずその理論が影響力を保っているという事実は、人が実際にどう振る舞うかについて何か重要なことを捉えていることを示唆している。

一文の中に、名詞節(主語)・副詞句(挿入)・形容詞節(関係詞)・名詞節(目的語)・疑問詞節が同居しています。それでも、各かたまりの「位置」を見れば、働きは順に決まっていきます。これが第II部で繰り返し使う読み方です。

5. つまずきやすい形

(1) 同じ接続詞・関係詞が複数の働きを持つ

that(名詞節・同格の形容詞節)、as(副詞節・関係詞)、what(名詞節のみ)。語そのものに働きが固定されているわけではありません。語の一覧を暗記するより、その語が導くかたまりの「位置」を見るほうが確実です。個別の識別は第11〜19講で扱います。

(2) 名詞節と形容詞節(同格)は、直前を見て分ける

the news that he resigned(同格・形容詞)と I heard that he resigned(名詞)。どちらも後ろは完全な that 節ですが、直前が名詞なら形容詞(同格)、動詞なら名詞(目的語)。位置が働きを決める好例です(第11・12講)。

(3) 副詞のかたまりは位置が自由

副詞の働きをするかたまりは、文頭・文中・文末のどこにでも置けます。位置が自由だからこそ、「骨格の要素ではない=抜いても文が成立する」ことが副詞の目印になります。名詞・形容詞は位置が決まっているぶん、見つけやすいのです。

(4) 中身の難しさに引きずられない

かたまりの中身が長く難しくても、働き自体は位置で決まります。中身の解析で行き詰まったら、いったん「このかたまりは名詞・形容詞・副詞のどれか」に戻る。働きが決まれば、少なくとも骨格は崩れません。

6. 入試ではこう出る

この「位置で働きを決める」見方は、下線部和訳と空所補充の両方に効きます。和訳では、かたまりの働き(名詞・形容詞・副詞)を取り違えると、訳文の骨組みが崩れます。空所補充では、空所の位置から「ここには名詞節が入る=whatthat か」のように、候補を働きで絞れます。

第II部(第11講以降)で扱う thatwhatas・関係詞・不定詞・分詞は、すべて「同じ形が位置によって働きを変える」ものばかりです。この第8講の見方が、第II部の全講の土台になります。

7. 確認問題

各文の下線部(〔 〕で示す)が名詞・形容詞・副詞のどの働きか、そしてその根拠(位置)を言えるようにしてから開いてください。

(1) 〔What the report revealed〕 shocked the entire industry.

解答・解説を見る

名詞(主語)。述語動詞 shocked の主語の位置にあります。抜くと主語が無くなるので、骨格の一部です。

その報告書が明らかにしたことは、業界全体に衝撃を与えた。

(2) The theory 〔that the universe is expanding〕 is now widely accepted.

解答・解説を見る

形容詞(同格)。名詞 The theory の直後にあり、その中身を説明しています。抜いても The theory is widely accepted は成立=修飾。後ろが完全なので同格の that 節です(第12講)。

宇宙が膨張しているという理論は、今では広く受け入れられている。

(3) 〔Because prices kept rising〕, consumers began to cut back.

解答・解説を見る

副詞。主節 consumers began to cut back の外にあり、その理由を説明しています。抜いても主節は成立します。従属接続詞 because が導く副詞節です。

物価が上がり続けたので、消費者は支出を切り詰め始めた。

(4) They discussed the best way 〔to reduce waste〕.

解答・解説を見る

形容詞。名詞 the best way の直後で、それを説明する不定詞(形容詞用法)です。「廃棄物を減らす(ための)最善の方法」。

彼らは廃棄物を減らす最善の方法を話し合った。

(5) The question of 〔whether machines can truly think〕 has fascinated philosophers.

解答・解説を見る

名詞。前置詞 of の後ろにあります(前置詞の目的語=名詞の位置)。whether 節は名詞の働きをします。of whether…think 全体は The question を説明する形容詞(前置詞句)です。

機械が本当に思考できるのかという問いは、哲学者たちを魅了してきた。

8. この講のまとめ

原理3 かたまりの働きは名詞・形容詞・副詞の3つだけ。位置が働きを決める
名詞の位置 主語・目的語・補語・前置詞の後ろ(骨格の一部。抜くと壊れる)
形容詞の位置 名詞の直後(説明。抜いても成立)
副詞の位置 それ以外(動詞・文を説明。位置は自由)
読む順 中身の分析より先に、位置で働きを決める

第I部はここまでです。骨格をつかみ、修飾を外し、かたまりの働きを位置で決める――この土台の上に、第II部を築きます。次の第9講(第I部の締め)では、第II部の thatwhat・関係詞の識別で決め手になる「完全な文と不完全な文」を扱います。

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