第11講 that の識別(1)|接続詞か関係代名詞か|英文の原理
― 接続詞か関係代名詞か
英文で最もよく出てきて、最も判断を迷わせる語が that です。しかも、決め手は意味ではありません。後ろが完全か、不完全か。それだけです。
that は「あれ」とも訳せるし、訳さないこともある。名詞にも形容詞にも接続詞にもなる。だから「文脈で判断する」と言われがちですが、実際には後ろの節に欠けがあるかどうかで、ほとんどが決まります。この講では、いちばん出現頻度の高い二つ――関係代名詞の that と 接続詞の that――の切り分けを扱います。
1. この講で解決する読み間違い
次の2文を見比べてください。that の直前はどちらも名詞で、見た目はほとんど同じです。
(B) The report that the committee had failed was inaccurate.
(A) の that は関係代名詞、(B) の that は接続詞です。訳も構造もまったく違います。
(A) 委員会が提出した報告書は却下された。
(B) 委員会が失敗したという報告は不正確だった。
「report は『報告書』か『報告』か」で悩んでも決まりません。決まるのは、that の後ろを見たときです。(A) の submitted は「〜を提出する」なので目的語が要りますが、後ろには何もない。欠けている。(B) の had failed は主語 the committee があり、それだけで成り立ちます。欠けていない。
2. 原理 ― 完全か、不完全か
関係代名詞の後ろは不完全(S・O・C のどれかが欠けている)。接続詞 that の後ろは完全(欠けがない)。
なぜそうなるのか
関係代名詞は、第3講で見たとおり二役をこなしています。節と節をつなぐ役目と、その節の中で主語か目的語になる役目です。一語で二役を引き受けているので、本来その要素があるはずの場所が空く。これが「不完全」の正体です。
一方、接続詞の that は、つなぐ役目しか持ちません。節の中の要素にはならないので、節の中はもとのまま揃っています。だから「完全」。用法を覚えるのではなく、二役か一役かという構造上の違いが、そのまま欠けの有無になっていると考えると、判定が自分の中で再現できるようになります。
「完全/不完全」の見方
| 動詞のタイプ | そろっているべき要素 | 例(完全) |
|---|---|---|
| 自動詞 | S | the train arrived |
| 他動詞 | S + O | he wrote a novel |
| be・become など | S + C | she became a lawyer |
| give・tell など | S + O + O | they gave him a chance |
ここで前置詞にも注意します。the house that she grew up in は、in の目的語が空いているので不完全です。欠けは動詞の後ろとはかぎりません。
3. 判別の手順
- that の直前を見る。名詞でなければ、関係代名詞ではありません。動詞の直後(think that)、形容詞の直後(sure that)、文頭なら、接続詞か指示語です。
- that の後ろの節を、いったん独立した文として読む。主語はあるか。動詞が要求する目的語や補語はそろっているか。前置詞が宙に浮いていないか。
- 欠けがあれば関係代名詞、なければ接続詞。ここで判定は決まります。
- 接続詞だった場合、その節が何をしているかを決める。直前の名詞の内容を説明しているなら同格、動詞の目的語なら名詞節(第12講)。
- 迷ったら、that を which に置き換えてみる。自然なら関係代名詞、おかしければ接続詞です。ただしこれは確認用で、判定の主役はステップ2です。
この手順は、当てはめれば答えが出る装置ではありません。ステップ2で「この動詞は目的語が要るのか」を判断する場面が必ず来るからです。ただ、「意味から考える」から「後ろの欠けを探す」に問いを置き換えられるので、確かめるべきものがはっきりします。長文の中で立ち止まる時間は、これだけでかなり短くなります。
4. 例文の解析
The report that arrived this morning changed everything.
- 直前
- 名詞 The report
- 後ろ
- arrived this morning ― 主語がない=不完全
- 判定
- 関係代名詞(主格)
今朝届いた報告書が、すべてを変えた。
The report that the committee submitted was rejected.
- 後ろ
- the committee submitted ― submit は他動詞なのに目的語がない=不完全
- 判定
- 関係代名詞(目的格)。省略も可能
委員会が提出した報告書は却下された。
The report that the committee had failed was inaccurate.
- 後ろ
- the committee had failed ― S も動詞もそろっている=完全
- 判定
- 接続詞。The report の中身を説明している(同格)
委員会が失敗したという報告は、不正確だった。
EX 2 と語の並びはよく似ていますが、後ろの節の完全・不完全が正反対です。ここを見ないと、この2文は区別できません。
We knew that the deadline had already passed.
- 直前
- 動詞 knew ― 名詞ではないので関係代名詞ではありえない
- 後ろ
- 完全
- 判定
- 接続詞。節全体が knew の目的語(名詞節)
私たちは、締切がすでに過ぎていることを知っていた。
ステップ1だけで決まる形です。that の直前が動詞なら、その時点で関係代名詞の可能性は消えます。
The house that she grew up in has been demolished.
- 後ろ
- she grew up in ― in の目的語がない=不完全
- 判定
- 関係代名詞
彼女が育った家は取り壊された。
欠けは文末に現れることもあります。前置詞が宙に浮いていたら、そこが欠所です。
Everything that matters to him is in that box.
- 1つめの that
- 後ろに主語がない=不完全 → 関係代名詞
- 2つめの that
- that box ― 名詞の前に置かれた指示形容詞。節を作っていない
彼にとって大事なものはすべて、あの箱の中にある。
that の直後が名詞で、しかもその名詞の後ろに動詞が続かないなら、それは「あの」という指示形容詞です(第12講)。
The assumption that the students who scored highest had studied longest turned out to be one that the data did not support.
- 1つめの that
- 後ろは the students … had studied longest =完全 → 接続詞(同格)
- who
- 後ろに主語がない → 関係代名詞
- 2つめの that
- support の目的語がない → 関係代名詞(先行詞は one)
- 述語動詞
- scored / had studied / turned out / did support(4)
- 検算
- つなぐ語 that / who / that(3) 4 − 3 = 1 ✓
最も高い点を取った学生が最も長く勉強していたという想定は、結局、データが裏づけないものだった。
同じ that が一文に二度出てきて、役割が違います。ここで「that は関係代名詞」と一括りに決めてしまうと、主節の動詞(turned out)を見失います。一つひとつ、後ろの欠けを見にいく――それだけで両方とも決まります。
5. つまずきやすい形
(1) 完全なのに関係詞、という例外
the day that we met/the reason that he refused は、後ろが完全なのに関係詞です。これは when・why の代わりに使われている用法で、先行詞が時・場所・理由・方法を表す名詞のときに起こります(第14講)。先行詞がこの4種類なら、完全でも関係詞でありうると覚えておくと、例外に振り回されません。
対比で確かめると差がはっきりします。
The reason that he refused is still unclear. … 完全 → 関係副詞にあたる that
(2) 同格の that を取れる名詞は限られる
fact / idea / news / belief / rumor / evidence / possibility / conclusion / assumption のように、中身を持てる名詞だけが同格の that 節を従えます。the table that … のような具体物の名詞では起こりません。これも「候補を絞る」材料になります。
(3) 判定には自動詞・他動詞の知識が要る
The letter that he wrote は不完全(write は他動詞)、The man that lives here は不完全(主語がない)。一方 discuss・approach・mention のように、日本語では前置詞が要りそうなのに他動詞である語は、欠けの判定を誤らせます。完全・不完全の判定は語法の知識と地続きです。そこを詰めておくと、判定の精度が上がります。
(4) that は省略されることがある
目的格の関係代名詞と、名詞節を作る that は省略できます。主格の関係代名詞は省略できません。第3講の検算式で「つなぐ語が足りない」と分かったときに探すのは、この二つです。
6. 入試ではこう出る
文法・語法問題では、空所に that か what か which かを選ばせる形で、この判定が直接問われます。判断材料は毎回同じで、空所の後ろが完全か不完全かです(what との違いは第16講)。
和訳問題では、同格の that を関係代名詞と読み違えると、訳が根本から変わります。The idea that machines could think … を「機械が考えることができた考え」と訳してしまうような誤りは、意味を考えて起きるのではなく、後ろの完全・不完全を確かめないまま訳し始めることで起きます。早稲田大学や慶應義塾大学の長文では、同格の that 節が3行にわたることも珍しくありません。
7. 確認問題
各文の that が関係代名詞か接続詞か、そしてその根拠(後ろのどこが欠けているか/欠けていないか)を言えるようにしてから開いてください。
(1) The email that arrived last night contained the final schedule.
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関係代名詞(主格)。arrived の主語がありません。that がその主語を兼ねています。
昨夜届いたメールに、最終的な日程が書かれていた。
(2) The claim that the drug had no side effects was later withdrawn.
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接続詞(同格)。the drug had no side effects は S も O もそろっていて完全です。The claim の中身を説明しています。claim は中身を持てる名詞なので、同格の that を取れます。
その薬に副作用はないという主張は、のちに撤回された。
(3) The town that we drove through had only one traffic light.
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関係代名詞。後ろは we drove through で、through の目的語が空いています。欠けが文末の前置詞の後ろにあるパターンです。
私たちが車で通り抜けた町には、信号が一つしかなかった。
(4) She insisted that the meeting be postponed until Monday.
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接続詞(名詞節)。that の直前が動詞なので、この時点で関係代名詞ではありません。後ろも完全です。be postponed と原形になっているのは、insist のような要求・提案を表す動詞の後ろで使われる形です。
彼女は、会議を月曜まで延期すべきだと強く主張した。
(5) The reason that he gave did not convince anyone, but the reason that he refused is still unclear.
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前半の that は関係代名詞。gave の目的語が欠けています。
後半の that は関係副詞にあたる用法。he refused は完全ですが、先行詞が the reason なので why の代わりになっています。
同じ the reason that でも、後ろの欠けの有無で役割が変わります。
彼が挙げた理由は誰も納得させなかったが、彼が断った理由はいまだにはっきりしない。
8. この講のまとめ
| 関係代名詞 | 後ろが不完全(S・O・C・前置詞の目的語のどれかが欠ける)。直前は名詞 |
|---|---|
| 接続詞 | 後ろが完全。直前が動詞・形容詞なら名詞節、名詞なら同格 |
| なぜ | 関係代名詞は「つなぐ」+「節内の要素」の二役だから、その場所が空く |
| 例外 | 先行詞が時・場所・理由・方法の名詞なら、完全でも関係詞(when/where/why/how の代用) |
| 省略 | 目的格の関係代名詞と名詞節の that は省略可。主格は不可 |
次の第12講では、残りの that――指示語・強調構文・so … that――を同じ枠組みで片づけます。強調構文の that は、この講の判定基準だけでは決まらない唯一の形なので、そこを正面から扱います。
次の講へ
「なんとなく that」を卒業する
後ろの完全・不完全を判定するには、動詞の語法を実際の英文の中で確かめ続ける必要があります。日本英語塾は担任制のオンライン英語専門塾です。長文を読みながら、どの that でどう判断したかを毎回言語化し、和訳・文法問題の両方に効く形に仕上げます。
