第7講 前置詞句は骨格に入らない|修飾を外して読む|英文の原理
― 修飾を外して読む
長い英文をほどく最初の一手は、前置詞句をいったん外すことです。外すと、主語・述語・目的語という骨格が浮かび上がります。
ここまで例文の解析で、前置詞から始まるかたまりを何度も灰色にして「外す」と言ってきました。この講では、その理由と手順をはっきりさせます。前置詞句は文の骨格(S・V・O・C)には入らず、名詞や動詞を後ろから説明する修飾語です。これを外して読めるかどうかで、長文の速さが変わります。
1. この講で解決する読み間違い
この文は、前置詞句が3つ連続します(of the survey / by the ministry / in several regions)。ここで the survey や the ministry を主語と思ってしまうと、surprised の主語が見つからなくなります。
前置詞句をすべて外すと、骨格はこうです。
その調査の結果は、多くの専門家を驚かせた。(骨格)
(省庁がいくつかの地域で実施した調査の、という説明が The results に付いている)
2. 原理 ― 前置詞句は形容詞か副詞
前置詞句(前置詞+名詞)は、名詞を説明する形容詞の働きか、動詞・文全体を説明する副詞の働きをする。骨格の要素(S・V・O・C)にはならない。
「前置詞+名詞」で一つのかたまり。このかたまりは、次の2通りの働きしかしません。
| 働き | 説明する相手 | 例 |
|---|---|---|
| 形容詞 | 直前の名詞 | the book on the desk(机の上の本) |
| 副詞 | 動詞・文全体 | She read it on the train(電車で読んだ) |
どちらの働きでも、骨格には入らないという点は同じです。だから読解では、まず前置詞句をまとめて外し、S・V・O・C だけの骨格を見る。骨格が決まってから、各前置詞句を「どの名詞・どの動詞にかかるか」戻していけばよいのです。外す→骨格→戻すの順番が、長文を速く正確に読む土台になります。
3. 判別の手順
- 前置詞を見つけ、その後ろの名詞までを一かたまりにする。in / on / at / of / for / with / by / from / to / about / under / between など。
- そのかたまりを、いったん外す(心の中で灰色にする)。
- 残った骨格(S・V・O・C)を確定する。述語動詞の主語がすっきり見えるはずです。
- 外したかたまりを戻し、それぞれが直前の名詞(形容詞)か動詞(副詞)のどちらを説明しているかを決める。
この手順も、当てはめれば意味が出る装置ではありません。ステップ4で「この前置詞句はどの名詞にかかるのか」を判断する場面が来ます(同じ前置詞句が複数の解釈を持つこともあります)。ただ、骨格を先に確定しておくと、その判断に集中できます。骨格が曖昧なまま前置詞句の解釈に踏み込むと、迷いが増えます。
4. 例文の解析
The results of the survey conducted by the ministry in several regions surprised many experts.
- 骨格
- The results surprised many experts
- 外したもの
- of the survey(results を説明)/by the ministry・in several regions(conducted を説明)
省庁がいくつかの地域で実施した調査の結果は、多くの専門家を驚かせた。
The road to the summit was closed because of the heavy snow.
- to the summit
- 形容詞(The road を説明=「頂上への道」)
- because of the heavy snow
- 副詞(was closed の理由)
頂上への道は、大雪のために閉鎖されていた。
After the meeting, the team celebrated at a nearby restaurant with great enthusiasm.
- 骨格
- the team celebrated(第1文型)
- 前置詞句3つ
- すべて副詞(いつ・どこで・どのように)
会議のあと、チームは近くのレストランで大いに盛り上がって祝った。
骨格はたった2語。前置詞句を外すと、celebrated が自動詞(後ろに O が要らない)だと見えます。
She saw the man with the telescope.
- 解釈A
- with the telescope が saw にかかる(望遠鏡で見た)
- 解釈B
- with the telescope が the man にかかる(望遠鏡を持った男を見た)
彼女は望遠鏡でその男を見た/望遠鏡を持った男を見た。
前置詞句のかかり先が形容詞(名詞)とも副詞(動詞)とも取れる有名な例です。骨格(She saw the man)はどちらでも同じで、前置詞句の戻し方だけが分かれます。こういうときは前後の文脈で決めます。骨格を先に固めておくからこそ、この一点に迷いを絞れます。
The impact of rising temperatures on coastal communities around the world has become undeniable.
- 核
- The impact(単数 → has)
- 骨格
- The impact has become undeniable
気温上昇が世界中の沿岸地域に与える影響は、否定しようのないものになっている。
前置詞句が3連続して主語を長くしています(第5講と同じ話)。外せば核は The impact。動詞が単数 has であることも裏づけになります。
In most of the countries in the study, access to clean water improved significantly.
- 骨格
- access improved(第1文型)
- 注意
- 文頭の countries は前置詞 In の中。主語ではない
研究対象となった国のほとんどで、きれいな水へのアクセスは大幅に改善した。
文頭が前置詞(In)で始まっているので、そのかたまりが終わるまで主語は出てこない、と構えられます。主語は access。
The reluctance of many governments to invest in long-term research, despite clear evidence of its benefits, has slowed progress in several critical fields.
- 核
- The reluctance(単数 → has)
- 骨格
- The reluctance has slowed progress
- 外したもの
- of many governments(形容詞)/to invest…(不定詞・reluctance を説明)/despite…benefits(挿入された副詞)/in several critical fields(progress を説明)
多くの政府が長期的な研究への投資に消極的であることは、その利益が明白であるにもかかわらず、いくつかの重要な分野での進展を遅らせてきた。
前置詞句・不定詞句・コンマ挿入をすべて外すと、骨格は The reluctance has slowed progress の4語。この骨格が見えれば、どれだけ修飾が付いても文の主張は取れます。
5. つまずきやすい形
(1) 群前置詞・句動詞は一かたまり
because of / in front of / according to / due to は複数語で一つの前置詞(群前置詞)。また look at / depend on のように、動詞と前置詞がセットで一つの意味になる形(句動詞)もあります。この場合、at / on は動詞側に属するので、機械的に「前置詞句だから外す」とすると動詞の意味が欠けます。動詞と結びついた前置詞は、動詞の一部として残す。
(2) 前置詞の後ろは名詞相当(動名詞もくる)
after finishing the report の finishing は動名詞で、前置詞 after の目的語です(第2講)。前置詞の後ろに -ing が来たら、それは動名詞。不定詞(to do)は原則として前置詞の後ろに来ません。
(3) 外しすぎない ― be動詞の後ろの場所
The keys are on the table. の on the table を外すと The keys are だけになり、文が成立しません。be 動詞が「ある・いる」の意味のとき、後ろの前置詞句は情報として必要です。外すのは「骨格をつかむため」の一時的な作業で、意味を捨てるわけではありません。
(4) 前置詞句が続くときは、近い名詞から順にかける
a book on the history of science は、of science が the history に、on the history… が a book にかかります。前置詞句は、原則として直前の名詞から順にかかると考えると、入れ子の構造が整理できます。
6. 入試ではこう出る
長文速読では、前置詞句を外して骨格を先取りできるかが、読む速さを決めます。1文ごとに「誰が・どうした・何を」を骨格で押さえ、修飾は必要なときだけ戻す。すべてを均等に精読しようとすると時間が足りません。共通テストのように語数が多く時間の厳しい試験ほど、この骨格先取りが効きます。
和訳問題では逆に、外した前置詞句を正しい相手に戻すことが問われます。EX 4 のように、かかり先が2通りある前置詞句では、文脈から一方に決めて訳す必要があります。骨格と修飾を分けて考えているからこそ、この判断が明確にできます。
7. 確認問題
各文の①前置詞句をすべて外した骨格 ②各前置詞句のかかり先を決めてから開いてください。
(1) The demand for skilled workers in the technology sector has grown rapidly over the past decade.
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骨格は The demand has grown(第1文型)。for skilled workers・in the technology sector は The demand を説明、over the past decade は has grown を説明。核が The demand(単数)なので has。
技術分野における熟練労働者の需要は、この10年で急速に高まってきた。
(2) Despite the warnings from experts, the company proceeded with the project without any changes.
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骨格は the company proceeded(第1文型)。Despite the warnings from experts・with the project・without any changes はすべて副詞的に proceeded を説明。Despite は群前置詞で、後ろに名詞を取ります(接続詞ではないので節は続きません)。
専門家からの警告にもかかわらず、その会社は何の変更もなくプロジェクトを進めた。
(3) A change in the tax policy of the region affected businesses of every size.
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骨格は A change affected businesses(第3文型)。in the tax policy・of the region は A change 側、of every size は businesses を説明。核 A change(単数)で affected。
その地域の税制の変更は、あらゆる規模の企業に影響を与えた。
(4) For many students in rural areas, access to a good library remains a serious problem.
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骨格は access remains a problem(第2文型・access = problem)。文頭の For many students in rural areas は副詞、to a good library は access を説明。文頭が前置詞なので、そのかたまりが終わるまで主語は出てこないと構えられます。
地方の多くの生徒にとって、良い図書館を利用できることは、いまだ深刻な問題である。
(5) The success of the campaign depended on the support of volunteers from across the country.
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depend on は句動詞なので、on は動詞側に残します。骨格は The success depended on the support。of the campaign は success、of volunteers・from across the country は the support を説明。句動詞の on を機械的に外さないのがポイントです。
そのキャンペーンの成功は、全国から集まったボランティアの支援にかかっていた。
8. この講のまとめ
| 前置詞句 | 前置詞+名詞。骨格(S・V・O・C)には入らない |
|---|---|
| 働き | 直前の名詞を説明(形容詞)/動詞・文を説明(副詞) |
| 読む順 | 外す → 骨格を確定 → 各前置詞句を正しい相手に戻す |
| 例外 | 句動詞の前置詞(depend on)は動詞側に残す/be+場所は情報として必要 |
| 効果 | 骨格先取りで速読が安定。かかり先の判断に迷いを絞れる |
第7講までで、骨格をつかむ技術がほぼ揃いました。次の第8講では、これまで「かたまり」と呼んできたものを、名詞・形容詞・副詞の3つの働きに整理し、第II部(かたまりを見抜く)への橋を架けます。
次の講へ
骨格を先取りして、速く正確に
前置詞句を外して骨格をつかむ訓練は、時間制限のある試験で最も差が出ます。日本英語塾は担任制のオンライン英語専門塾です。実際の長文で、どこを骨格と見てどこを修飾として外したかを毎回言語化し、速読と精読の両方を鍛えます。
