第6講 目的語と補語|「イコール」があるかどうか|英文の原理

英文の原理|第I部 文の骨格をつかむ|第6講
目的語と補語
―「イコール」があるかどうか

動詞のうしろに名詞が2つ並んだとき、それが第4文型(人+物)か第5文型(O=C)かは、2つがイコールかどうかで決まります。訳が反転する分かれ道です。

第4講で文型を「後ろの要求」として捉えました。この講では、そのなかで最も間違えやすい目的語(O)と補語(C)の区別を詰めます。決め手はただ一つ、うしろの要素とその前の要素のあいだにイコールがあるか。ここを外すと、文の意味がまるごと入れ替わります。

1. この講で解決する読み間違い

The board named her successor. / The board named her a genius.

形はそっくりですが、意味が違います。

左:取締役会は、彼女の後任を指名した。(後任=別の誰か)
右:取締役会は、彼女を天才だと呼んだ。(彼女=天才)

左の her successor は「彼女の後任」という一つの名詞のかたまり(O が一つ・第3文型)。右の hera genius は別々の要素で、彼女=天才というイコールがある(第5文型)。同じ named でも、うしろの構造が違えば訳が変わります。

名詞が2つ並んでいるように見えても、「A の B」という一つのかたまりなのか、「A と、A とイコールの B」なのかで、文型も訳も分かれます。イコールを確かめる一手が、この分岐を決めます。

2. 原理 ― O と C は「イコール」で分かれる

原理 1(詰め)

補語(C)は、主語または目的語とイコールの関係にある。目的語(O)は、主語とも他方の名詞とも別物である。

関係 文型
S + V + 名詞 S = 名詞 第2(C) She is a doctor.
S + V + 名詞 S ≠ 名詞 第3(O) She has a doctor.
S + V + 名詞 + 名詞 名詞1 ≠ 名詞2 第4(OO) She gave him a book.
S + V + 名詞 + 名詞/形容詞 名詞1 = 名詞2/形容詞 第5(OC) She called him a hero.

C には名詞も形容詞も来ます。形容詞が来ていれば、それは必ず C です(形容詞は O になれない)。迷うのは名詞が2つ並んだときだけ。そのときに「イコールか」を確かめれば、第4か第5かが決まります。

イコールの確かめ方

名詞1 is 名詞2 と言い換えて、意味が通るかを見ます。He is a hero(彼=英雄)は通る→第5。He is a book(彼=本?)は通らない→第4。この置き換えは、判断の材料として使えます。

3. 判別の手順

  1. 動詞のうしろの要素を数える(第4講)。前置詞句は外す。
  2. うしろが1個なら、S とイコールか。イコール→C(第2)、別物→O(第3)。
  3. うしろが2個で、片方が形容詞なら、それが C。自動的に第5文型です。
  4. うしろが2個とも名詞なら、「名詞1 is 名詞2」で言い換える。通れば第5(O=C)、通らなければ第4(人+物)。
  5. 迷ったら「AのB」で一語か試す。her successor のように「彼女の後任」と一語にまとまるなら、それは分けずに一つの O です。

ステップ4の言い換えは、答えを自動で出すのではなく、自分の読みを確かめるためのものです。文脈によっては両方あり得る形もあり、そのときは前後の内容で決めます。それでも、「イコールで言い換える」という具体的な作業に落とせるので、勘に頼らずに済みます。

4. 例文の解析

EX 1|第2文型(S=C)

After years of training, she became a respected surgeon.

After years of training, she became a respected surgeon.
関係
she = surgeon(彼女=外科医)
文型
第2(C)

何年もの訓練を経て、彼女は尊敬される外科医になった。

EX 2|第3文型(S≠O)

The clinic hired a respected surgeon last spring.

The clinic hired a respected surgeon last spring.
関係
clinic ≠ surgeon(診療所≠外科医)
文型
第3(O)

その診療所は昨春、尊敬される外科医を雇った。

EX 1 と同じ a respected surgeon でも、S とイコールなら C、別物なら O。同じ名詞でも役割は文で決まります。

EX 3|第4文型(人≠物)

The instructor showed the beginners a simpler method.

The instructor showed the beginners a simpler method.
言い換え
the beginners is a method? → 通らない
文型
第4(OO)「初心者に方法を」

その講師は初心者たちに、より簡単な方法を示した。

EX 4|第5文型(O=C・名詞)

The committee elected her chairperson of the board.

The committee elected her chairperson of the board.
言い換え
she is chairperson → 通る
文型
第5(OC)「彼女を議長に選んだ」

委員会は彼女を理事会の議長に選んだ。

elect O C の C には冠詞が付かないことが多いのも、C が「役職・肩書」を表すときの特徴です。

EX 5|第5文型(O=C・形容詞)

The jury found the defendant guilty on all charges.

The jury found the defendant guilty on all charges.
C
guilty(形容詞なので必ず C)
関係
defendant = guilty(被告=有罪)
文型
第5(OC)「被告を有罪と判断した」

陪審は被告を全ての訴因について有罪と判断した。

C が形容詞なら、数える手間もなく第5だと決まります。find O C「O が C だと分かる・判断する」。

EX 6|「AのB」で一語(第3)

They appointed the deputy director without consulting the staff.

They appointed the deputy director without consulting the staff.
うしろ
the deputy director は「副部長」という一つのO
文型
第3(O)

彼らは職員に相談することなく副部長を任命した。

deputy director は「副+部長」で一つの肩書。名詞が2つ並んで見えても、「AのB」で一語にまとまるなら分けない。第5文型の C と混同しないよう注意します。

EX 7|入試レベル

What the critics considered a weakness of the novel — its refusal to offer easy answers — later made it a classic.

〔What the critics considered a weakness of the novel〕 — its refusal to offer easy answers — made it a classic.
What節の中
considered O C:the novel の何か = a weakness(第5・「〜を弱点とみなした」だが O が what に抜けている)
主節
made it a classic:it = a classic(第5・「それを古典にした」)
ダッシュ間
挿入(同格の言い換え・第32講)

批評家たちが小説の弱点とみなしたもの――安易な答えを示すことへの拒否――が、のちにそれを古典にした。

一文に第5文型が2つ入っています。consideredmade も「O を C とする/にする」型。イコールを2か所とも押さえると、抽象的な内容でも骨格が崩れません。

5. つまずきやすい形

(1) 第4文型は「人に物を」、第5文型は「O が C」

make him a cake(第4・彼にケーキを作る、彼≠ケーキ)と make him a star(第5・彼をスターにする、彼=スター)。同じ make him a 名詞 でも、イコールの有無で正反対の意味になります。ここは make の最頻出のひっかけです。

(2) C の前に as や to be が入ることがある

regard O as Cthink of O as Cconsider O (to be) Casto be があっても、O = C の関係は同じです。as の識別は第19講で扱いますが、この型では「O を C とみなす」とまとめて覚えるより、O と C にイコールがあると見るほうが応用が利きます。

(3) 形容詞は O になれない

うしろに形容詞があれば、それは C で確定。keep the room cleanclean は C(room = clean)。形容詞を見たら第5という判断は、ほぼ例外なく使えます。

(4) 前置詞句を C と混同しない

put the book on the shelfon the shelf は場所の修飾語で C ではありません。put は O と「場所」を要求する動詞で、5文型の枠には収まりにくい形です。細かい分類にこだわるより、骨格(O)と修飾(前置詞句)を切り分けるのが読解では実用的です。

6. 入試ではこう出る

和訳問題で make / find / call / keep / leave / consider / name / elect が出たら、第5文型を疑うのが定石です。うしろの2要素にイコールがあるかを確かめ、あれば「O を C に(と)〜する」と訳す。ここを第3や第4で処理すると、答案の意味が変わります。イコールの確認は、和訳の骨格を決める一手です。

文法・語法問題では、動詞が第4文型を取れるか(explain me the rule は誤り。explain the rule to me が正)や、第5文型の C の形(原形か to 不定詞か=make him go / get him to go)が問われます。これらも、O と C の関係を軸に整理すると、個別暗記が減ります。

7. 確認問題

各文の①うしろの要素 ②イコールの有無 ③文型と訳の方向を決めてから開いてください。

(1) The long delay left the passengers exhausted and irritable.

解答・解説を見る

うしろは the passengersexhausted and irritable(形容詞)。形容詞が C なので第5文型。passengers = exhausted/irritable。「O を C の状態にしておく/させる」。

長い遅延は、乗客たちを疲れ果てさせ、いらだたせた。

(2) The foundation granted the young researcher a generous scholarship.

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うしろは the young researchera generous scholarship。「研究者 is 奨学金」は通らない→第4文型(人≠物)。「研究者に奨学金を与えた」。

その財団は、その若い研究者に手厚い奨学金を与えた。

(3) Critics consider the film a masterpiece of modern cinema.

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うしろは the filma masterpiece。「film is a masterpiece」は通る→第5文型(O=C)。「その映画を傑作とみなす」。consider O C の典型です。

批評家たちは、その映画を現代映画の傑作とみなしている。

(4) The manager offered the new client a substantial discount.

解答・解説を見る

うしろは the new clienta substantial discount。「client is a discount」は通らない→第4文型。「顧客に割引を提示した」。

その担当者は、新規の顧客に大幅な割引を提示した。

(5) Years of neglect had turned the once-grand hotel into a ruin.

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turn O into C の形。into があっても O(hotel)= C(ruin)の関係で、第5文型に準じる形。「O を C に変えた」。make O C と同じ発想で読めます。主語 Years of neglect は無生物主語(第34講)。

長年の放置が、かつて壮麗だったそのホテルを廃墟に変えていた。

8. この講のまとめ

C(補語) S または O とイコール。名詞も形容詞も来る
O(目的語) S とも他方の名詞とも別物
名詞2個の判定 「名詞1 is 名詞2」で言い換え → 通れば第5(OC)、通らねば第4(OO)
形容詞 うしろに形容詞 → 迷わず C → 第5文型
注意 「AのB」で一語なら分けない/make him a starmake him a cake はイコールで分岐

第I部もあと少しです。次の第7講では、ここまで「外す」とだけ言ってきた前置詞句を正面から扱い、骨格に入るもの/入らないものの線引きをはっきりさせます。

次の講へ

イコール一つで、訳が決まる

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