第33講 否定|部分否定・準否定・作用域|英文の原理

英文の原理|第III部 動かされた英文を戻す|第33講
否定
― 部分否定・準否定・作用域

否定は読み間違いの温床です。「すべてが〜ない」のか「すべてが〜わけではない」のか。否定がどこまで及ぶかで、意味が正反対になります。

否定は、位置と範囲(作用域)で意味が大きく変わります。not … all(すべてが〜わけではない=部分否定)と no(すべて〜ない=全否定)は正反対。hardly / seldom のような準否定、二重否定、否定の及ぶ範囲――この講で、否定を構造から正確に読みます。

1. 原理 ― 否定は「どこまで及ぶか」で決まる

原理 6(適用)

否定語がどの語・どの範囲を打ち消すか(作用域)で意味が決まる。not + 全体を表す語(all / every / always / both)は「すべてが〜わけではない」(部分否定)。

意味
not all / not every すべてが〜なわけではない(部分否定)
not always / not necessarily いつも/必ずしも〜なわけではない(部分否定)
no / none / not any まったく〜ない(全否定)
not … both 両方とも〜なわけではない(部分否定)
neither どちらも〜ない(全否定)

ポイントは not と「全体の語」の組み合わせ。not all は「全部ではない(一部はそうだ)」=部分否定。no は「一つもない」=全否定。この違いを取り違えると、意味が正反対になります。

2. 部分否定と全否定 ― 見分けと訳し分け

Not all birds can fly. … 部分否定「すべての鳥が飛べるわけではない」(飛べる鳥もいる)
No bird can fly backward easily. … 全否定「どの鳥も〜ない」
準否定語――hardly / scarcely / barely(ほとんど〜ない)、seldom / rarely(めったに〜ない)、few / little(ほとんどない)――は、否定に近いが完全な否定ではない。「ほとんど〜ない」の含みで、文頭に出ると倒置を起こします(第30講)。

3. 例文の解析

EX 1|部分否定(not necessarily)

A higher price does not necessarily mean better quality.

A higher price does not necessarily mean better quality.
not necessarily
部分否定「必ずしも〜ない」(高くても質が良いとはかぎらない)

より高い価格が、必ずしもより良い品質を意味するわけではない。

EX 2|全否定(no)

No amount of preparation could have prevented the accident.

No amount of preparation could have prevented the accident.
No + 名詞
全否定「どんな〜も…ない」

どれほど準備しても、その事故を防ぐことはできなかっただろう。

No + 名詞 が主語に立つと強い全否定。「いかなる準備も防げなかった」。

EX 3|準否定(hardly)+倒置

Hardly anyone noticed the subtle change in tone.

Hardly anyone noticed the subtle change in tone.
Hardly anyone
準否定「ほとんど誰も〜ない」

その微妙な調子の変化に気づいた人は、ほとんどいなかった。

hardly / scarcely は「程度がほとんどない」、seldom / rarely は「頻度がめったにない」。hardly any=「ほとんど〜ない」。

EX 4|二重否定

There is no rule that has no exception.

There is no rule 〔that has no exception〕.
no … no
二重否定 → 強い肯定「例外のない規則はない=どんな規則にも例外がある」

例外のない規則はない。(どんな規則にも例外がある)

否定が2つで肯定になります。not … without -ing(〜せずには…しない=…すれば必ず〜する)も同型。二重否定は肯定に読み替えると意味が明確になります。

EX 5|否定の作用域(not because …)

She didn't leave because she was afraid.

She didn't leave because she was afraid.
作用域A
「怖かったから去った、のではない」(去った理由が別)
作用域B
「怖かったので、去らなかった」(去らなかった)

彼女は、怖かったから去ったのではない(別の理由で去った)/彼女は怖かったので去らなかった。

notbecause 節まで及ぶか、動詞だけに及ぶかで意味が変わります。否定がどこまで及ぶか(作用域)は、文脈やコンマで判断します(コンマがあれば動詞の否定に寄る)。

EX 6|入試レベル

Not until we recognize that progress does not always benefit everyone equally can we design fairer policies.

Not until we recognize 〔that progress does not always benefit everyone equally〕 can we design fairer policies.
Not until …(否定の倒置)
主節が倒置(can we)。「〜して初めて…できる」(第30講)
not always
部分否定「必ずしも全員に等しく利益をもたらすわけではない」

進歩が必ずしも全員に等しく利益をもたらすわけではないと認識して初めて、私たちはより公正な政策を設計できる。

否定の倒置(Not until)と部分否定(not always)が同居。否定の型を一つずつ見分けると、複雑な文も正確に読めます。

4. つまずきやすい形

(1) not + all/every/always =部分否定

not all / not every / not always / not necessarily / not both / not completely は「すべて/必ず〜なわけではない」。全否定(no / none / never / neither)と正反対なので、訳し分けが重要です。

(2) 準否定は否定語として扱う

hardly / scarcely / seldom / rarely / few / little は準否定。not と重ねると二重否定になり、and でなく or で受けるなど、否定と同じふるまいをします。文頭で倒置も起こします(第30講)。

(3) 二重否定は肯定

no … without / never … without / not … un- は、否定2つで肯定。It is not uncommon.(珍しくない=よくある)。否定が2つ重なったら、肯定に読み替えます。

(4) 否定の作用域は文脈で決める

not … becausenot … butnot … too は、否定がどこまで及ぶかで意味が変わります。コンマの有無や文脈で、否定の範囲を確定します。

5. 入試ではこう出る

和訳問題では、部分否定と全否定の訳し分けが直接問われます。Not all … を「すべて〜ない」と全否定で訳す誤りは頻出。not + 全体の語なら「すべてが〜わけではない」と部分否定で訳します。二重否定を肯定に読み替えられるかも狙われます。

内容一致では、否定の作用域(EX 5)や部分否定を正しく取れるかで正誤が分かれます。not necessarily / not always を「〜だ」と肯定に読んでしまうと、選択肢の正誤が逆になります。否定は、どの語をどこまで打ち消すかを構造から確定する――これが読み間違いを防ぎます。

6. 確認問題

各文の否定が①部分否定・全否定・準否定・二重否定のどれか ②意味を言えるようにしてから開いてください。

(1) Not every problem has a simple solution.

解答・解説を見る

部分否定(not every)。「すべての問題に単純な解決策があるわけではない」(ある問題にはある)。全否定「どの問題にもない」ではない。

すべての問題に単純な解決策があるわけではない。

(2) None of the participants had prior experience.

解答・解説を見る

全否定(none)。「参加者の誰も事前の経験がなかった」。none of は完全な否定です。

参加者の誰も、事前の経験を持っていなかった。

(3) We cannot fully appreciate the work without understanding its context.

解答・解説を見る

二重否定(cannot … without)→肯定。「その背景を理解せずには、その作品を十分に理解できない」=「背景を理解して初めて理解できる」。not … without は肯定に読み替える。

その背景を理解せずには、その作品を十分に理解することはできない。

(4) The new method is not always faster than the traditional one.

解答・解説を見る

部分否定(not always)。「新しい方法が、従来の方法より必ずしも速いわけではない」(速いこともあるが、常にではない)。

新しい方法が、従来のものより必ずしも速いわけではない。

(5) Seldom do we appreciate what we have until we lose it.

解答・解説を見る

準否定(Seldom)+倒置。「失って初めて、持っているもののありがたさに気づくことは、めったにない」=「たいてい、失うまで気づかない」。文頭の準否定で倒置(do we・第30講)。

私たちは、失うまで、持っているもののありがたさに気づくことがめったにない。

7. この講のまとめ

部分否定 not + all/every/always/necessarily/both「すべてが〜わけではない」
全否定 no/none/never/neither「まったく〜ない」
準否定 hardly/scarcely/seldom/rarely/few/little。否定語扱い・倒置を起こす
二重否定 否定2つ→肯定(not … without / not un-
作用域 not … because/but。否定がどこまで及ぶかを文脈で確定

第III部も残り1講。次の第34講では、無生物主語と名詞構文を扱います。「モノが主語」の英語を、日本語の自然な形に読み替える技術で、第III部を締めくくります。

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否定を、範囲から正確に読む

部分否定と全否定を取り違えると、意味が正反対になります。日本英語塾は担任制のオンライン英語専門塾です。実際の入試英文で、否定の型と作用域を構造から確定し、読み間違いを防ぐ力をつけます。

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