第34講 無生物主語と名詞構文|訳ではなく構造の問題|英文の原理

英文の原理|第III部 動かされた英文を戻す|第34講
無生物主語と名詞構文
― 訳ではなく構造の問題

「モノが主語」の英語は、直訳すると不自然になります。主語を原因・手段・時などに読み替えれば、自然な日本語になります。これは訳のセンスではなく、構造の読み替えです。

第III部の最後です。The news surprised her.(その知らせが彼女を驚かせた)のように、英語は人以外のもの(無生物)を主語に立てるのが得意です。直訳すると「知らせが驚かせた」と不自然になりますが、これは訳のセンスの問題ではなく、構造をどう読み替えるかの問題です。無生物主語と、それと表裏の名詞構文を、構造から整理します。

1. 原理 ― 無生物主語は「原因・手段・条件」に読み替える

原理 3・4(応用)

無生物が主語で人が目的語のとき、主語を「〜のために・〜によって・〜すると」(原因・手段・条件・時)と読み替え、目的語の人を主語のように訳すと、自然な日本語になる。意味は変わらない。構造の読み替えである。

The heavy rain prevented us from going out.
直訳:大雨が私たちを外出から妨げた
読み替え:大雨のせいで、私たちは外出できなかった

主語 The heavy rain を「大雨のせいで」(原因)と読み替え、目的語 us を主語のように訳す。英語の骨格(SVO)は保ったまま、日本語の自然な形にほどくだけです。これは決まった型があり、感覚ではなく手順で処理できます。

主語の読み替え 代表的な動詞
原因「〜のために・〜で」 cause / make / lead to / prevent / enable / force
手段「〜によって・〜すれば」 help / allow / let / show / tell
時・条件「〜すると・〜すれば」 bring / take / see / find(時・場所の主語)

2. 名詞構文 ― 動詞の意味を名詞にたたむ

名詞構文は、動詞・形容詞の内容を名詞にまとめた形です。He arrived late.his late arrival(彼が遅れて着いたこと)。名詞の中に「誰が・どうする」という文の関係がたたまれています。読むときは、名詞を動詞・形容詞に戻し、隠れた主語・目的語を補います

The invention of the printing press changed history.
= 印刷機が発明されたことが、歴史を変えた(the printing press was invented をたたんだ名詞)
名詞構文は、無生物主語と表裏の関係にあります。The invention of … changed history. は、名詞構文(the invention of …)を無生物主語にした典型。名詞を動詞に戻して「〜が…したこと」と読み替えると、内容が明確になります。of の後ろが意味上の主語か目的語かを見極めるのがコツです。

3. 例文の解析

EX 1|無生物主語(原因)

A sudden noise made the whole class fall silent.

A sudden noise made the whole class fall silent.
読み替え
「突然の物音で、クラス全体が静まり返った」(原因)
構造
第5文型 make O C(第6講)は保ったまま

突然の物音で、クラス全体が静まり返った。

EX 2|無生物主語(prevent … from)

A lack of funding prevented the team from completing the study.

A lack of funding prevented the team from completing the study.
読み替え
「資金不足のために、チームは研究を完成できなかった」

資金不足のために、チームは研究を完成させられなかった。

prevent/stop/keep O from -ing「O が〜するのを妨げる」。無生物主語では「〜のせいで O は…できない」と読み替えます。

EX 3|無生物主語(enable / allow)

The new software allows users to edit documents simultaneously.

The new software allows users to edit documents simultaneously.
読み替え
「その新しいソフトを使えば、ユーザーは文書を同時に編集できる」(手段)

その新しいソフトを使えば、ユーザーは文書を同時に編集できる。

allow/enable O to do「O が〜するのを可能にする」。「〜を使えば O は…できる」と手段に読み替えます。

EX 4|名詞構文(of =意味上の目的語)

The destruction of the rainforest threatens countless species.

The destruction of the rainforest threatens countless species.
名詞構文
The destruction of the rainforest = 「熱帯雨林が破壊されること」(of の後ろが意味上の目的語)
読み替え
「熱帯雨林が破壊されることが、無数の種を脅かす」→「熱帯雨林の破壊によって、無数の種が脅かされる」

熱帯雨林の破壊は、無数の種を脅かしている。

the destruction of X は「X を破壊すること」(destroy X をたたんだ形)。名詞を動詞に戻すと関係が見えます。

EX 5|名詞構文(of =意味上の主語)

The arrival of the internet transformed how people communicate.

The arrival of the internet transformed how people communicate.
名詞構文
The arrival of the internet = 「インターネットが登場したこと」(of の後ろが意味上の主語)

インターネットの登場は、人々のコミュニケーションのしかたを一変させた。

arrive は自動詞なので、of the internet は意味上の主語(インターネットが到来する)。EX 4 の destroy(他動詞)では目的語。元の動詞が自動詞か他動詞かで、of の役割が決まります。

EX 6|入試レベル

The failure of successive governments to address the problem left the public deeply skeptical of political promises.

The failure of successive governments to address the problem left the public deeply skeptical of political promises.
名詞構文
The failure of … to address … = 「歴代の政府がその問題に対処できなかったこと」(of=主語、to address=内容)
無生物主語
その名詞句が主語。leave O C(第6講)
読み替え
「歴代の政府がその問題に対処できなかったために、国民は政治的約束に深く懐疑的になった」

歴代の政府がその問題に対処できなかったことで、国民は政治的約束に深く懐疑的になった。

名詞構文(The failure of … to address …)を無生物主語にした典型。名詞を動詞に戻し、主語を原因に読み替えると、長い抽象的な主語もほどけます。

4. つまずきやすい形

(1) 無生物主語は原因・手段・時に読み替える

「モノが人を〜する」の形は、主語を「〜のために/〜によって/〜すると」と読み替え、目的語の人を主語のように訳す。直訳の不自然さは、構造の読み替えで解消できます。訳のセンスではありません。

(2) 名詞構文は動詞・形容詞に戻す

his refusal to answer(彼が答えるのを拒んだこと)、the difficulty of the task(その仕事が難しいこと)。名詞を動詞・形容詞に戻し、隠れた主語・目的語を補って「〜が…すること」と読みます。

(3) of の後ろは主語か目的語か

元の動詞が他動詞なら of X=目的語(the discovery of gold=金を発見すること)、自動詞なら主語(the growth of the economy=経済が成長すること)。元の動詞の型で決まります。

(4) with / this / -ing も無生物主語になる

This will save you time.(これで時間が節約できる)、Working late every day made her exhausted.(毎日遅くまで働いたことで疲れ果てた)。指示語や動名詞句も無生物主語として、原因・手段に読み替えます。

5. 入試ではこう出る

和訳問題では、無生物主語を直訳せず自然な日本語に読み替えることが問われます。「大雨が私たちを妨げた」ではなく「大雨のせいで〜できなかった」。名詞構文も、名詞を動詞に戻して「〜が…したこと」と訳せるかが評価されます。これらは構造の読み替えなので、手順として身につけられます。

英作文では逆に、日本語の「〜なので」「〜すると」を無生物主語(cause / allow / enable など)で英語らしく表現できると、簡潔で自然な英文になります。読解で身につけた読み替えが、そのまま作文の武器になります。第III部(動かされた英文を戻す)は、これで完成です。

6. 確認問題

各文を①無生物主語・名詞構文をどう読み替えるか ②自然な日本語で言えるようにしてから開いてください。

(1) The discovery of the new drug gave patients fresh hope.

解答・解説を見る

名詞構文+無生物主語。The discovery of the new drug=「その新薬が発見されたこと」(discover は他動詞→ of は目的語)。「その新薬の発見によって、患者たちは新たな希望を得た」。

その新薬の発見によって、患者たちは新たな希望を得た。

(2) Bad weather forced the organizers to cancel the event.

解答・解説を見る

無生物主語(原因)。「悪天候のために、主催者はイベントを中止せざるを得なかった」。force O to do「O にやむなく〜させる」を「〜のせいで O は…せざるを得ない」と読み替える。

悪天候のために、主催者はイベントを中止せざるを得なかった。

(3) The rise of social media has changed the way news spreads.

解答・解説を見る

名詞構文(of=主語)+無生物主語。The rise of social media=「ソーシャルメディアが台頭したこと」(rise は自動詞→ of は主語)。「ソーシャルメディアの台頭が、ニュースの広まり方を変えた」。

ソーシャルメディアの台頭が、ニュースの広まり方を変えた。

(4) A few minutes' walk will bring you to the station.

解答・解説を見る

無生物主語(条件・時)。「数分歩けば、駅に着く」。bring you to X を「〜すれば X に着く」と読み替える。直訳「数分の歩きがあなたを駅へ連れて行く」は不自然。

数分歩けば、駅に着きます。

(5) Her reluctance to speak surprised everyone who knew her.

解答・解説を見る

名詞構文+無生物主語。Her reluctance to speak=「彼女が話したがらないこと」(she was reluctant to speak をたたんだ形)。「彼女が話したがらないことは、彼女を知る誰もを驚かせた」→「彼女が口を閉ざしていることに、彼女を知る誰もが驚いた」。

彼女が話したがらないことに、彼女を知る誰もが驚いた。

7. この講のまとめ

無生物主語 主語を原因・手段・時に読み替え、目的語の人を主語のように訳す
代表動詞 cause/make/prevent/enable/allow/force/bring/take
名詞構文 動詞・形容詞を名詞にたたんだ形。動詞に戻して「〜が…すること」
of の役割 元が他動詞→目的語/自動詞→主語
本質 訳のセンスではなく、構造の読み替え(手順化できる)

第III部(動かされた英文を戻す)が完成しました。並列・省略・比較・倒置・強調・挿入・否定・無生物主語――変形された英文を、すべて標準形に戻して読めます。次の第IV部(第35講〜)では、ここまでの技術を実際の入試設問――長文・和訳・内容説明・要約・英作文――に当てて、得点に変えていきます。

次の講へ

無生物主語を、構造から読み替える

「モノが主語」の英語は、原因・手段に読み替えれば自然な日本語になります。日本英語塾は担任制のオンライン英語専門塾です。読解でも英作文でも、無生物主語と名詞構文を構造から自在に扱う力をつけます。

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