非人称の it(天候・時間・距離・寒暖)|「それ」と訳さない主語|英文法Q&A
― 「それ」と訳さない、席を埋める主語
It is raining.(雨が降っている)/It is seven o'clock.(7時だ)。この it は「それ」ではありません。英語が主語の席を空にできないために置く、意味の薄い置き字です。
Q. It is raining. の it は、何を指しているのですか?
A. 何も指していません。英語の文は「主語+動詞」が骨格で、主語の席を空にできない言語です。ところが、天候・時間・距離などは「これといった主語」がありません。そこで、意味を持たない it を主語の席に置いて形を整えるのです。これを非人称の it(仮の主語)と呼びます。使う場面は決まっています。①天候:It is sunny / snowing. ②時間・曜日・日付:It is five o'clock. / It is Monday. / It is May 5th. ③距離:It is ten kilometers to the station. ④寒暖・気温:It is cold today. / It is thirty degrees. ⑤明暗:It is getting dark. どれも it を「それ」と訳しません。日本語なら「雨だ」「7時だ」と主語なしで言えるところを、英語は席を空けられないので it で埋める――そう捉えると腑に落ちます。形式主語の it(後ろに to do という真主語がある)や、代名詞の it(前に出た物を指す)とは、別の it です。
1. 結論 ― 主語の席を埋める it
天候・時間・曜日・日付・距離・寒暖・明暗を述べるとき、意味のない it を主語に置く。「それ」と訳さない。英語は主語の席を空にできないための置き字(仮の主語)です。
2. 使う場面
| 場面 | 例 |
|---|---|
| 天候 | It is raining. |
| 時間・曜日 | It is seven o'clock. / It is Sunday. |
| 距離 | It is 5 km to the park. |
| 寒暖・明暗 | It is cold. / It is dark. |
3. 例文で確認
It was snowing hard when I woke up.
目が覚めたとき、雪が激しく降っていた。
天候の it。「それ」ではなく、主語の席を埋めるだけ。snow を動詞として使っています。
It is about two hours by train, and it is already noon.
電車で2時間ほどで、もう正午だ。
距離(two hours by train)も時刻(noon)も、主語は非人称の it。日本語には現れません。
It gets dark early and it is cold in winter.
冬は暗くなるのが早く、そして寒い。
明暗(gets dark)も寒暖(is cold)も、it を主語に。訳では it は消えます。
4. つまずきやすい形
(1) 「それ」と訳さない
非人称の it は何も指しません。It is raining. を「それは雨が降っている」とはしない。it は訳に出しません。
(2) 主語を省けないから置く
日本語は「暑いね」と主語なしで言えますが、英語は主語の席を空にできない。だから It is hot. と it を置きます。
(3) 形式主語の it とは別
It is easy to swim. の it は、後ろの to swim(真主語)の代役。非人称の it には、そうした真主語がありません。
(4) 代名詞の it とは別
I found a coin. It was old. の it は a coin を指す代名詞。非人称の it は、何も指しません。
5. 原理とのつながり
非人称の it は、英語という言語の根本的なクセから生まれます。それは、「文には必ず主語が要る」ということ。英語の文の骨格は 主語+動詞で、この主語の席を空っぽのままにできません。ところが、世の中には「特に主語がない」出来事があります。天候(雨が降る)、時間(7時だ)、距離(駅まで5キロだ)、寒暖(寒い)、明暗(暗くなる)――これらは、日本語なら「雨だ」「7時だ」「寒いね」と、主語を言わずに成り立ちます。日本語は主語を省ける言語だからです。しかし英語は、主語の席を空けられない。そこで、意味を持たない it を主語の席に座らせて、形だけ整えるのです。この it は「それ」ではなく、席を埋めるためだけの置き字(dummy)――だから訳には現れません。ここで、英語には「置き字の it」がもう一種あることに気づきます。形式主語の it です。It is hard to swim. の it も一見「置き字」ですが、こちらは後ろに本当の主語 to swim を持っている点が決定的に違う。it は真主語の「代わりに前に立つ」役で、中身は後ろにあります。一方、非人称の it には、後ろにも真主語がありません。純粋に席を埋めるだけ。さらに、前に出た物を指す代名詞の it(the pen → it)とも区別できます。「英語は主語の席を空にできない。天候・時間・距離などは、意味のない it で埋める」――言語の骨格から捉える。それが土台です。
6. 次に読む
非人称の it を、「主語の席」から
英語は主語を空にできない――その一点で、この it は腑に落ちます。日本英語塾は担任制のオンライン英語専門塾です。文の骨格から英語を捉える力を、指導します。全国どこからでも受講できます。
