第12講 that の識別(2)|同格・指示語・強調構文|英文の原理
― 同格・指示語・強調構文
第11講で片づかなかった that を、ここで全部拾います。とくに強調構文の that は、後ろの完全・不完全だけでは決まらない唯一の形です。
第11講では、後ろが不完全なら関係代名詞、完全なら接続詞、という判定を立てました。この第12講では、残りの that――同格の接続詞・指示語(あれ/あの)・強調構文――を同じ枠組みで整理します。強調構文の that だけは、完全・不完全の物差しが効かない特別な形なので、そこを正面から扱います。これで that の識別が一通り完成します。
1. that の全体像
英文に出てくる that は、次の6つのどれかです。第11講で①②③を、この講で④⑤⑥を扱います。
| 種類 | 直前 | 後ろ | 例 |
|---|---|---|---|
| ①関係代名詞 | 名詞 | 不完全 | the book that I read [O欠] |
| ②接続詞(名詞節) | 動詞・形容詞 | 完全 | I know that he left |
| ③接続詞(同格) | 名詞 | 完全 | the fact that he left |
| ④指示代名詞 | — | — | That is my house. |
| ⑤指示形容詞 | — | 名詞が続く | that house |
| ⑥強調構文 | It is 〜 | 完全に見えるが欠所あり | It was John that broke it |
③同格と⑥強調構文は、どちらも「直前が名詞で、後ろが一見完全」に見えるため、第11講の判定だけでは分けきれません。この2つの見分けが、この講の山場です。
2. 同格の that ― 名詞の中身を説明する
同格の that は、直前の名詞の中身そのものを説明します。the fact that he left は「彼が去ったという事実」――the fact =「彼が去ったこと」です。関係代名詞(the fact that surprised me「私を驚かせた事実」)とは、後ろが完全か不完全かで分かれます(第11講)。
There is growing evidence that sleep affects memory in complex ways.
- 直前
- 名詞 evidence(中身を持てる)
- 後ろ
- sleep affects memory =完全
- 判定
- 同格の接続詞。「睡眠が記憶に影響するという証拠」
睡眠が複雑な形で記憶に影響するという証拠が、増えつつある。
3. 指示語の that ― あれ/あの
指示語の that は、いちばん基本の「あれ・あの」です。見分けは簡単で、関係詞・接続詞のように節をつなぐ働きをしていないことが目印です。
- 代名詞That is a difficult question.(あれは難問だ)that 自体が主語・目的語になる
- 形容詞I remember that day.(あの日)直後に名詞が続く
- 代用The climate here is milder than that of Tokyo.that = the climate(名詞のくり返しを避ける)
The population of the city is larger than that of its neighbor.
- that
- = the population(くり返しを避けた代用)
- 判定
- 指示代名詞。節はつないでいない
その都市の人口は、隣の都市の人口より多い。
that of ... の形を見たら、前に出てきた名詞の代用を疑います。比較(第27講)でよく出る形です。
4. 強調構文の that ― 完全・不完全が効かない唯一の形
強調構文は It is 〜 that ... の形で、強調したい語を It is と that ではさむものです。もとの文から一部を抜き出して前に出すので、that の後ろはその抜き出した分だけ欠けます。ところが、抜き出したのが副詞(時・場所)だと、後ろが完全に見えてしまう。ここが、完全・不完全の物差しだけでは決まらない理由です。
It is と that を取り除いても文が成立すれば、強調構文。成立しなければ、形式主語の it(第20講)や、ふつうの it is 〜 that(that は接続詞)である。
It was her calm response that impressed the interviewers.
- 取り除くと
- Her calm response impressed the interviewers. =成立
- 判定
- 強調構文(主語 her calm response を強調)
面接官に感銘を与えたのは、彼女の冷静な受け答えだった。
It was in 1969 that humans first walked on the moon.
- 後ろ
- humans first walked on the moon =一見完全
- 取り除くと
- In 1969 humans first walked on the moon. =成立
- 判定
- 強調構文(副詞句 in 1969 を強調)
人類が初めて月面を歩いたのは、1969年のことだった。
後ろが完全に見えても、It is と that を外して文が成立するなら強調構文。第11講の物差し(完全・不完全)が効かないのは、この副詞強調のときだけです。だから、It is 〜 that を見たら、まず「外して成立するか」を試します。
It is clear that the plan needs revision.
- 取り除くと
- Clear the plan needs revision. =成立しない
- 判定
- 形式主語の It。that 節が真主語(第20講)。that は接続詞
その計画が見直しを必要としているのは明らかだ。
It is と that を外すと壊れるので、強調構文ではありません。It is 形容詞 that ...(clear / true / possible / likely)はたいてい形式主語です。強調構文の It is の後ろには、強調される名詞・副詞が来るのが目印です。
5. so … that / such … that の that
so 形容詞/副詞 that ...、such a 名詞 that ... の that は、程度・結果を表す副詞節を作ります。so や such と呼応しているのが目印です。
The instructions were so unclear that even the experts were confused.
- 目印
- 前に so unclear がある → so … that の呼応
- 働き
- 副詞節(程度・結果)「とても〜なので…」
その説明はあまりに不明瞭だったので、専門家でさえ混乱した。
so / such が前にあれば、この that は結果の副詞節。同格や関係詞と迷いません。
6. 確認問題
各文の that が①〜⑥のどれか、そしてその根拠を言えるようにしてから開いてください。
(1) It was the unexpected question that left the candidate speechless.
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⑥強調構文。It was と that を外すと The unexpected question left the candidate speechless. =成立。主語 the unexpected question を強調しています。
その候補者を絶句させたのは、思いがけない質問だった。
(2) The idea that time can flow at different rates still puzzles many people.
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③同格の接続詞。直前が名詞 The idea(中身を持てる)、後ろ time can flow at different rates は完全。「時間が異なる速さで流れうるという考え」。
時間が異なる速さで流れうるという考えは、いまも多くの人を戸惑わせる。
(3) The results were so surprising that the team repeated the experiment twice.
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so … that(結果の副詞節)。前に so surprising があり呼応しています。「とても驚くべきだったので…」。
結果があまりに驚くべきものだったので、チームは実験を2度くり返した。
(4) The book that changed his life was lent to him by a stranger.
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①関係代名詞(主格)。直前が名詞 The book、後ろ changed his life は主語が欠ける不完全。
彼の人生を変えたその本は、見知らぬ人が貸してくれたものだった。
(5) It is unlikely that the two sides will reach an agreement soon.
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②接続詞(形式主語構文)。It is と that を外すと Unlikely the two sides will… =成立しない → 強調構文ではない。It は形式主語、that 節が真主語です(第20講)。
両者が近いうちに合意に達する見込みは薄い。
(6) The temperature on the surface is higher than that at the core — a fact that puzzled scientists for years.
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1つめの that は④指示代名詞(代用):that = the temperature。2つめの that は①関係代名詞:直前 a fact、後ろ puzzled scientists は主語欠の不完全。
同じ文に別種の that が2つあります。一つずつ直前と後ろを見れば決まります。
表面の温度は中心部の温度より高い――何年も科学者たちを悩ませてきた事実だ。
7. この講のまとめ
| ①関係代名詞 | 名詞+不完全(第11講) |
|---|---|
| ②接続詞(名詞節) | 動詞・形容詞+完全 |
| ③同格 | 中身を持てる抽象名詞+完全 |
| ④⑤指示語 | 節をつながない。あれ/あの/名詞の代用 |
| ⑥強調構文 | It is と that を外して文が成立する。副詞強調では後ろが完全に見える |
| so/such … that | 前の so/such と呼応。結果・程度の副詞節 |
これで that の識別は一通り完成です。次の第13講からは、関係代名詞そのものを掘り下げます。先行詞と欠所の対応、who / which / whose の使い分けを、第9講の「完全・不完全」を土台に整理します。
次の講へ
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