第36講 和訳問題の答案|どこまで訳出するか|英文の原理
― どこまで訳出するか
和訳の採点は、構造が取れているかを見ています。骨格の対応を訳に必ず残し、そのうえで日本語として整える。順番を守れば、部分点を落としません。
京都大学・大阪大学・一橋大学などの下線部和訳は、構造把握の総合力を測る問題です。この講で、構造をどこまで訳出し、どこを日本語として整えるかを整理します。原則は一つ――骨格(S・V・O・C)の対応と、修飾のかかり先を訳に残す。そのうえで自然な日本語にする。この順番が、採点で評価される答案を作ります。
1. 原理 ― 構造を残し、日本語を整える
和訳は、原文の構造(誰が・何を・どうする、どの修飾がどこにかかるか)を訳に反映させたうえで、自然な日本語にする。構造を無視した「雰囲気訳」は、意味が合っていても構造点を落とす。逆に、構造を残せば、語彙が一部分からなくても部分点が残る。
採点者が見るのは、あなたが構造を取れているかです。だから、主語と述語の対応、目的語・補語、関係詞節や分詞のかかり先を、訳文にきちんと反映させます。日本語の自然さは、その次。まず構造、それから日本語、の順です。
2. 答案の手順
- 述語動詞を数え、骨格(主節のS・V・O・C)を確定する(第1〜9講)。
- 修飾(関係詞・分詞・前置詞句・副詞節)のかかり先を決める(第13・22・7・18講)。
- 変形(省略・比較・倒置・無生物主語)を標準形に戻す(第III部)。
- 骨格を軸に、直訳の骨を作る。この段階では多少ぎこちなくてよい。
- 日本語として整える。無生物主語の読み替え(第34講)、語順、助詞を調整。ただし構造の対応は崩さない。
3. 答案づくりの実演
What makes the discovery so significant is not the phenomenon itself, which had been observed before, but the simple explanation it offers for a puzzle that had frustrated scientists for decades.
手順1:骨格
主節は第2文型。What …(名詞節・主語/第16講)=is=not A but B(第25講)。
手順2:A と B、修飾のかかり先
B = the simple explanation 〔(that) it offers [O欠] for a puzzle 〔that had frustrated scientists for decades〕〕
which … は非制限(挿入・第15講)で the phenomenon を補足。B の中の (that) it offers は目的格関係詞の省略(第13講)、that had frustrated … は a puzzle を説明。
手順3:変形を戻す
What makes the discovery so significant は無生物主語+第5文型。「その発見をこれほど重要にしているもの」→「その発見がこれほど重要なのは」と読み替え可(第34講)。
手順4-5:答案
- 残した構造
- not A but B(〜ではなく〜)/非制限の挿入(――で処理)/2つの関係詞のかかり先
その発見がこれほど重要なのは、現象そのもの――それは以前にも観察されていた――ではなく、何十年も科学者たちを悩ませてきた難問に対してそれが与える単純な説明である。
構造(not A but B・挿入・関係詞のかかり先)を訳にすべて残し、無生物主語を読み替えて日本語を整えました。語彙が一部曖昧でも、この骨格が取れていれば部分点が残ります。
4. つまずきやすい形
(1) 関係詞のかかり先を訳で示す
関係詞節が「どの名詞を説明しているか」を、訳文の語順で示します。かかり先を取り違えると、意味も採点も変わります。長い場合は「〜する…」と後ろから訳すか、「…、それは〜」と非制限的に処理します。
(2) 省略・比較は補って訳す
than / as の後ろの省略(第27講)、共通関係の省略(第26講)は、補って訳します。「上司がするより」ではなく「上司が稼ぐより」。省略を復元した訳が、構造を取れている証拠になります。
(3) 無生物主語は読み替えるが、対応は保つ
「大雨が私たちを妨げた」→「大雨のために私たちは〜できなかった」(第34講)。読み替えても、原文の主語・動詞・目的語の対応は訳に反映されています。これが正しい意訳です。
(4) 代名詞は指示内容を(必要なら)補う
it / they / this は、指示内容が明らかで訳に必要なら、括弧などで補います(例:「それ(その発見)」)。ただし過剰に補いすぎず、原文が代名詞なら代名詞で訳すのが基本。設問の指示に従います。
5. 採点の観点
下線部和訳の採点は、多くの場合構造のポイントごとに配点されています。主節の骨格、関係詞のかかり先、省略の復元、比較の対象、無生物主語の処理――それぞれが得点源です。一つの語彙を間違えても、構造が取れていれば他のポイントで得点できるのが、構造重視の答案の強みです。
逆に、全体の意味は合っていても、関係詞のかかり先を無視したり省略を補わなかったりすると、そのポイントの配点を落とします。「なんとなく意味が通る訳」より、構造の対応が見える訳のほうが、実は点が伸びます。第37講では、和訳ではなく「下線部の内容説明・内容一致」で、構造から根拠を取る方法を扱います。
6. 確認問題
次の各文を、①骨格 ②修飾のかかり先 ③変形の復元を確認したうえで和訳してから開いてください。
(1) The confidence with which he spoke concealed how little he actually knew.
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骨格:The confidence … concealed 〔how little he actually knew〕。with which he spoke は〈前置詞+関係代名詞〉で The confidence を説明(第14講)。how little は間接疑問(第17講)。無生物主語(第34講)。
答案:彼が話すときの自信は、彼が実際にはほとんど何も知らないことを覆い隠していた。(「彼が自信たっぷりに話すので、実際にはほとんど知らないことが分からなかった」も可)
彼が話すときの自信は、実際には彼がほとんど知らないことを覆い隠していた。
(2) Not until the data were re-examined did the error, which everyone had overlooked, become obvious.
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骨格:the error … became obvious。Not until … による倒置(第30講)を戻す。which everyone had overlooked は非制限の挿入(第15講)。
答案:データが再検討されて初めて、誰もが見落としていたその誤りが、明白になった。
データが再検討されて初めて、誰もが見落としていたその誤りが明白になった。
(3) The theory explains far more than any of its rivals do, and does so with fewer assumptions.
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骨格:The theory explains far more … and does so …。than any of its rivals do は比較(do = explain の代動詞・第26講)、any of its rivals は最上級相当(第29講)。does so=explains(第26講)。
答案:その理論は、競合するどの理論よりもはるかに多くを説明し、しかもより少ない仮定でそうする(説明する)。
その理論は、競合するどの理論よりもはるかに多くを説明し、しかもより少ない仮定でそれを行う。
7. この講のまとめ
| 原則 | 構造を訳に残す → 日本語を整える。順番を守る |
|---|---|
| 残す構造 | 主節の骨格・修飾のかかり先・省略の復元・比較の対象・無生物主語の対応 |
| 正しい意訳 | 構造を踏まえた読み替え(無生物主語→原因など)。雰囲気訳とは違う |
| 採点 | 構造ポイントごとに配点。語彙ミスがあっても他で得点できる |
| 手順 | 骨格→かかり先→変形の復元→直訳の骨→日本語を整える |
次の第37講では、下線部の内容説明・内容一致など、訳す以外の設問で、構造から根拠を取る方法を扱います。「本文のどこが根拠か」を構造で示せると、記述も選択も安定します。
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構造を残す和訳で、部分点を確実に
和訳は、構造を訳に残せば、語彙が曖昧でも部分点が残ります。日本英語塾は担任制のオンライン英語専門塾です。京大・阪大型の下線部和訳を、構造から答案に仕上げる訓練を、添削で徹底します。
