第28講 比較(2)|than 節の中の欠所と倒置|英文の原理

英文の原理|第III部 動かされた英文を戻す|第28講
比較(2)
― than 節の中の欠所と倒置

than は接続詞にも関係代名詞にも働きます。than 節の中に欠所があったり、語順が入れ替わったりする形を読み切ります。

第27講で比較の基本――対象を復元する――を押さえました。この講では、難関大で狙われる複雑な比較を扱います。than 節の中で名詞が欠ける形(than の関係代名詞的用法)、than / as の後ろで主語と動詞が倒置する形。どちらも「標準形に戻す」という第III部の原理で読めます。

1. 原理 ― than 節の欠所

原理 7(拡張)

than / as の後ろは、比較のために一部が欠けた不完全な節になることがある。than が関係代名詞のように節の中の要素を兼ね、欠所を作る。読むときは、欠所に「比べられている量」を補う。

比較級 + than の後ろに、目的語などが欠けた節が続くことがあります。この than は、接続詞であると同時に、節の中の欠所を埋める働き(関係代名詞的)をしています。

They spent more money than was available [S欠].
= 使えた金額(the money that was available)より多くの金を使った

than was available は主語が欠けています(than が主語を兼ねる)。「使えた(金額)より多く」と、欠所に比較の量を補って読みます。

2. than / as の後ろの倒置

比較の後半では、主語が長いときなどに主語と動詞が倒置することがあります。than + 動詞 + 主語 の語順。標準形(主語+動詞)に戻して読みます。

City dwellers walk less than do people who live in rural areas.
than people who live in rural areas do(倒置を戻す)
倒置が起きるのは、多くの場合主語が長いときです。than / as の後ろが〈動詞+長い主語〉になっていたら、倒置を戻して「長い主語 + 動詞」の順で読みます。意味は変わりません(第30講の倒置と同じ発想)。

3. 例文の解析

EX 1|than 節の主語の欠所

The project required more time than had been allocated.

The project required more time than [S欠] had been allocated.
than
主語を兼ねる(=than the time that had been allocated
補う
「割り当てられていた時間より多く」

そのプロジェクトは、割り当てられていたよりも多くの時間を必要とした。

EX 2|than 節の目的語の欠所

He achieved more in one year than most people achieve in a decade.

He achieved more in one year than most people achieve [O欠] in a decade.
than
achieve の目的語を兼ねる(欠所)

彼は1年で、たいていの人が10年で成し遂げるより多くを成し遂げた。

EX 3|than の後ろの倒置

Far more was at stake than had been publicly acknowledged by the officials.

Far more was at stake than had been publicly acknowledged by the officials.
than節
主語の欠所(=than what had been acknowledged)。「公に認められていたよりはるかに多くが危機にあった」

当局によって公に認められていたよりも、はるかに多くのことが危機に瀕していた。

EX 4|no more than / no less than

The renovation cost no less than three times the original estimate.

The renovation cost no less than three times the original estimate.
no less than
「〜も(多さを強調)」=as much as

改修費用は、当初の見積もりの実に3倍にも達した。

no less than(〜も/多さの強調)、no more than(〜しか/少なさの強調=only)。not less than(少なくとも)、not more than(せいぜい)との違いに注意します(第29講)。

EX 5|than 節の中に節が入れ子

The situation turned out to be more complicated than anyone who had studied it expected.

The situation turned out to be more complicated than anyone 〔who had studied it〕 expected [O欠].
than節
expected の目的語が欠所。中に関係詞節 who had studied it が入れ子

その状況は、それを研究した誰もが予想したよりも複雑であることが判明した。

EX 6|入試レベル

The reforms achieved less than had been promised, and far less than was needed to address the underlying problem.

The reforms achieved less than [S欠] had been promised, and far less than [S欠] was needed to address the underlying problem.
2つの than 節
ともに主語の欠所(=約束されていた量/必要とされていた量)
並列
and が2つの than 比較を結ぶ(第25講)

その改革は、約束されていたよりも少ないことしか達成せず、根本的な問題に対処するために必要とされていたよりもはるかに少なかった。

2つの than 節がともに主語欠。and が並列し、共通の The reforms achieved が省略。欠所を補い、並列を復元すれば、対比が読めます。

4. つまずきやすい形

(1) than の後ろが不完全なら、欠所に量を補う

than was expected / than had been allocated のように、than の直後に動詞が来て主語が無ければ、than が主語を兼ねる欠所。「予想された(量)より」と補います。

(2) than / as の後ろの倒置を戻す

than + 動詞 + 長い主語 は倒置。as + 動詞 + 主語 も同様(as did many others)。標準の語順に戻して読みます。

(3) rather A than B / more A than B(性質の比較)

He is more a scholar than a teacher.(教師というより学者だ)。more A than B で、同一の対象の2つの性質を比べることがあります。「B というより A」。

(4) 比較対象の省略で意味が2通り

I like her better than you. は「君より彼女が好き(than you like her)」とも「君が彼女を好きなより(than you do)」とも取れます。文脈で決めますが、あいまいさを避けるには省略を補います。

5. 入試ではこう出る

難関大の和訳では、than 節の欠所(EX 1・EX 2)や倒置(EX 3)を含む複雑な比較が出ます。欠所に比較の量を補い、倒置を標準形に戻すという手順で、構造を確定してから訳します。no more/less thannot more/less than の区別も頻出です(第29講で詳述)。

読解では、EX 6 のように and で複数の than 比較が並ぶ形が、抽象度の高い評論で現れます。並列(第25講)・省略(第26講)・比較(第27・28講)の3つを組み合わせて読む――第III部の技術が総合的に問われる場面です。

6. 確認問題

各文の than 節について、①欠所や倒置があるか ②標準形に戻した意味を言えるようにしてから開いてください。

(1) The storm caused more damage than had been predicted.

解答・解説を見る

than 節の主語の欠所。than the damage that had been predicted。「予測されていたよりも多くの被害」。than が主語を兼ねる。

その嵐は、予測されていたよりも多くの被害を引き起こした。

(2) She contributed as much to the project as did the senior researchers.

解答・解説を見る

as 節の倒置。as the senior researchers did(倒置を戻す)。as + did + 長い主語。「上級研究者たちと同じくらい貢献した」。

彼女は、上級研究者たちと同じくらいそのプロジェクトに貢献した。

(3) The company hired more staff than it could realistically afford.

解答・解説を見る

than 節の目的語の欠所。than the staff (that) it could affordafford の目的語が欠ける。「現実的に雇える以上のスタッフを雇った」。

その会社は、現実的に雇える以上のスタッフを雇った。

(4) The book is more a memoir than a work of history.

解答・解説を見る

more A than B(性質の比較)。同じ対象(その本)の2つの性質を比較。「歴史書というより回想録だ」。

その本は、歴史書というよりむしろ回想録だ。

(5) Far more people attended than the organizers had expected.

解答・解説を見る

than 節の目的語の欠所+比較級の強調 Far。than the number of people (that) the organizers had expected。「主催者が予想していたよりはるかに多くの人が出席した」。Farmore の強調。

主催者が予想していたよりも、はるかに多くの人が出席した。

7. この講のまとめ

than の欠所 than が節の中の主語・目的語を兼ねる。欠所に比較の量を補う
than/as の倒置 主語が長いと〈動詞+主語〉に。標準形に戻す
no more/less than 多さ・少なさの強調(=as much as/only)
more A than B 同一対象の2性質の比較「BというよりA」
総合 並列・省略・比較を組み合わせて標準形に戻す

次の第29講では、比較の第3回として、原級・比較級を使った最上級相当表現や、no more … than(クジラ構文)など、意味を取りにくい慣用的な比較表現を整理します。

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複雑な比較を、欠所と倒置から読む

than 節の欠所や倒置は、標準形に戻せば読めます。日本英語塾は担任制のオンライン英語専門塾です。難関大の複雑な比較を、並列・省略・比較の総合として構造から読み解く力をつけます。

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