第1講 英文の意味は構造で決まる|述語動詞をつかまえる|英文の原理

英文の原理|第I部 文の骨格をつかむ|第1講
英文の意味は構造で決まる
― 述語動詞をつかまえる

単語の意味は全部わかるのに、文全体では何を言っているのかわからない。その原因は語彙ではなく、どの語がこの文の中心なのかを決めていないことにあります。

この講座『英文の原理』は、英文を「なんとなく前から訳す」のではなく、構造を確定してから意味を決める読み方を、全40講で組み立て直すものです。第1講では、そのいちばん最初の一歩、つまり述語動詞を見つけることだけを扱います。地味に見えますが、入試の和訳で減点される答案の多くは、ここで一度つまずいています。

1. この講で解決する読み間違い

次の英文を読んでみてください。使われている単語は、どれも高校1年生までに習うものばかりです。

The book the professor recommended changed my view of history.

単語を前から順に日本語に置きかえると、こうなります。

「その本 / その教授 / 推薦した / 変えた / 私の見方 / 歴史の」

ここで多くの人が、「その本は、教授が推薦して、私の歴史観を変えた」のように、意味が通りそうな順に並べ直して切り抜けようとします。この文にかぎってはたまたま内容が近いので、それで済んでしまいます。しかし同じやり方を次の文に使うと、答えは一気に崩れます。

The letter written by her grandmother remained unopened for years.

「その手紙は書いた / 彼女の祖母によって / 残った / 開封されないまま / 何年も」――ここで written を「書いた」という述語だと思ってしまうと、「手紙が祖母を書いた」という妙な文になり、そのあとの remained の居場所がなくなります。実際には、この文の述語動詞は remained ただ一つで、written by her grandmotherthe letter を説明しているだけです。

この二つの文の違いは、語彙力では埋まりません。「動詞の形をした語のうち、どれがこの文の述語なのか」を決めているかどうか、それだけの違いです。そして、これは決め方が存在します。

2. 原理 ― 意味は構造の後に決まる

原理 0

英文の意味は、単語の意味の足し算では決まらない。どの語がどの語と結びつくかが決まって、はじめて意味が一つに決まる。

原理 1

文には必ず述語動詞がある。述語動詞とは、主語と結びついて時制を担っている動詞のこと。

ここでいう「時制を担う」とは、その動詞が現在形・過去形のどちらかの形をしていて、いつの話かを示しているという意味です。逆に言えば、時制を持たない動詞の形――to do(不定詞)・doing(動名詞・現在分詞)・done(過去分詞)――は、どれだけ動詞らしく見えても述語動詞ではありません。この三つをまとめて準動詞と呼びます(第2講で詳しく扱います)。

時制 述語動詞か
現在形・過去形 recommends / recommended ある 述語動詞
助動詞+原形 will recommend / can see ある(助動詞が担う) 述語動詞(全体で一つ)
be+Ving/be+Vpp is reading / was written ある(be が担う) 述語動詞(全体で一つ)
to+原形 to recommend ない 準動詞
Ving(単独) reading ない 準動詞
Vpp(単独) written ない 準動詞

表の3行目までに共通しているのは、「主語が誰か/いつの話か」がその形から読み取れるという点です。is reading なら主語は三人称単数で今の話、was written なら過去の話だとわかります。ところが written だけを取り出すと、誰がいつ書いたのかは形からはわかりません。だからこれは文の中心にはなれない、というのが「述語動詞ではない」ということの中身です。

3. 判別の手順 ― 見た瞬間に何を確認するか

手順といっても、当てはめれば答えが出てくる装置ではありません。考える範囲を狭めて、そこから先で頭を使うための道具です。実際、英文を速く読める人も、候補を絞ったうえで「どちらだろうか」と判断しています。何も絞らずに文全体を一度に考えようとすると、単語の意味しか手がかりが残りません。

  1. 動詞らしい語に、ひとまず全部しるしをつける。意味で選ばず、形で拾います。この段階では拾いすぎでかまいません。
  2. そのうち、時制を持たない形を外す。to+原形、単独の -ing、単独の -ed/-en(過去分詞)を候補から落とします。
  3. 助動詞や be とセットになっているものは、まとめて一つと数える。have been working は動詞3語ですが、述語動詞は一つです。
  4. 残った述語動詞を数える。一つなら、その文は一つの節でできています。二つ以上あるなら、次のステップへ進みます。
  5. 述語動詞が二つ以上あるなら、それらをつなぐ語を探す。見つからなければ、つなぐ語が省略されているか、数え違えているかのどちらかです(第3講)。
ステップ2でいちばん迷うのが -ed の形です。規則変化の動詞は過去形と過去分詞が同じ形なので、recommended だけを見ても述語動詞かどうかは決まりません。決め手になるのは、その語が置かれている位置です。直前に havebe があれば述語動詞の一部、名詞の直後にいきなり置かれていれば、その名詞を説明する過去分詞であることが多い――という形で、位置から候補を絞っていきます。

4. 例文の解析

やさしい文から順に、実際に手を動かして確認します。S=主語、V=述語動詞、O=目的語、C=補語、灰色=修飾語(骨格に入らない部分)です。

EX 1

The manager approved the plan without hesitation.

The manager approved the plan without hesitation.
動詞候補
approved
述語動詞
approved
節の数
1

部長はためらうことなくその計画を承認した。

動詞らしい語が一つしかないので、迷う余地がありません。without hesitation は前置詞から始まるかたまりで、文の骨格には入りません(第7講)。

EX 2

To finish the report took three hours.

To finish the report took three hours.
動詞候補
To finish / took
述語動詞
took
外した語
to finish

その報告書を仕上げるのに3時間かかった。

To finish には時制がありません。「いつ仕上げたのか」はこの形からは決まらないからです。したがって述語動詞は took のほうで、To finish the report は全体で主語になっています。

EX 3

Reading the manual carefully saves a great deal of time.

Reading the manual carefully saves a great deal of time.
動詞候補
Reading / saves
述語動詞
saves
決め手
saves-s は三人称単数現在。主語が必要になる

説明書を丁寧に読むことで、かなりの時間を節約できる。

Reading を「読んでいる」と述語のつもりで読むと、saves が浮いてしまいます。saves-s がついていることが、この語が現在形の述語動詞であることの証拠です。

EX 4

The letter written by her grandmother remained unopened for years.

The letter written by her grandmother remained unopened for years.
動詞候補
written / remained
述語動詞
remained
外した語
written
決め手
直前に behave がなく、名詞 The letter の直後にある

彼女の祖母が書いたその手紙は、何年も開封されないままだった。

冒頭で見た文です。written の直前には washas もありません。裸の過去分詞が名詞の後ろに置かれているので、これは The letter を説明するかたまりの先頭だと判断できます(第23講)。ここを見誤ると、remained の主語がなくなり、文全体が破綻します。

EX 5

The book the professor recommended changed my view of history.

The book 〔(that) the professor recommended〕 changed my view of history.
動詞候補
recommended / changed
述語動詞
2つとも(recommendedthe professor が主語)
つなぐ語
見当たらない → 省略されている

その教授が薦めてくれた本が、私の歴史観を変えた。

述語動詞が2つあるのに、つなぐ語が見当たりません。原理2(第3講)に照らせば、節が2つなら、つなぐ語が1つ必要です。ここでは目的格の関係代名詞 that(または which)が省略されています。「動詞が2つ、つなぐ語が0」という食い違いが、省略に気づくきっかけになるわけです。名詞のすぐ後ろに〈名詞+動詞〉が続いていたら、この形をまず疑う、という当たりのつけ方ができます。

EX 6

Scientists who study the deep ocean have discovered species that no one had ever recorded.

Scientists 〔who study the deep ocean〕 have discovered species 〔that no one had ever recorded〕.
動詞候補
study / have discovered / had recorded
述語動詞
3つ(have discoveredhad recorded はそれぞれ全体で一つ)
つなぐ語
who / that
検算
節3 − 1 = つなぐ語2 ✓

深海を研究している科学者たちは、これまで誰も記録したことのない種を発見した。

述語動詞3つに対してつなぐ語が2つ。数が合っているので、この読み方のどこかで大きく取り違えている可能性は低い、と判断できます。この数え上げは、答えを出すためというより、自分の読みが破綻していないかを確かめるためのものです。

EX 7|入試レベル

Although the technology promised to reduce the time we spend on routine tasks, the hours saved were quickly filled with new demands that had not existed before.

Although the technology promised to reduce the time 〔(that) we spend on routine tasks〕〕, the hours saved were filled quickly with new demands 〔that had not existed before〕.
動詞候補
promised / to reduce / spend / saved / were filled / had existed
準動詞
to reduce(不定詞)と saved(過去分詞・the hours を説明)
述語動詞
promised / spend / were filled / had existed の4つ
つなぐ語
Althoughthat(省略)/ that の3つ
検算
節4 − 1 = つなぐ語3 ✓

その技術は、日常的な作業に費やす時間を減らすと約束していたが、浮いたはずの時間は、それまで存在しなかった新たな要求ですぐに埋まってしまった。

この文で最も間違えやすいのは the hours saved were の部分です。saved を述語動詞だと思うと、直後の were が説明できません。savedthe hours の説明とみなして初めて、were filled が主節の述語動詞として立ち上がります。動詞らしい語が2つ続いたら、前のほうが準動詞ではないかを疑う――EX 4 と同じ判断が、より長い文でもそのまま使えます。

5. つまずきやすい形

(1) 助動詞や完了形は「全体で一つ」

She has been studying French for three years. の動詞は hasbeenstudying の3語に見えますが、述語動詞は一つです。時制を担っているのは先頭の has だけで、残りはその形を細かく指定しているにすぎません。数えるのは「時制の数」だと考えると、迷いが減ります。

(2) 命令文には主語がないが、述語動詞はある

Read the instructions before you start.Read は原形ですが、これは命令文の述語動詞です。文頭にいきなり原形が来ていたら命令文を疑います。この文の述語動詞は Readstart の2つ、つなぐ語は before の1つで、数は合います。

(3) 名詞と動詞が同じ形の語

The study of ancient languages requires patience.study は動詞ではなく名詞です。前に The があり、後ろに of が続いていることが手がかりになります。形だけで拾ってから位置で落とすという順番にしておくと、こうした語で立ち止まらずに済みます。

(4) that の直後にいきなり動詞が来る形

The report that arrived this morning changed everything. では、that の直後が arrived です。この that は関係代名詞で、arrived の主語の位置に入っています。述語動詞は arrivedchanged の2つ、つなぐ語は that の1つ。この that の識別は、この講座でいちばん需要の大きいテーマなので、第11講と第12講で正面から扱います。

6. 入試ではこう出る

述語動詞の取り違えは、そのまま和訳の減点になります。京都大学や大阪大学のように、長い一文をそのまま和訳させる出題では、主節の述語動詞をどれと判断したかが答案の骨格を決めてしまうため、ここを外すと部分点も残りません。東京大学の要約(第1問A)でも、各文の述語動詞を取り違えると、段落の主張と具体例の関係が反転して読めてしまうことがあります。

逆に言えば、設問が「下線部を和訳せよ」であれ「要約せよ」であれ、最初にやることは同じです。動詞らしい語を拾い、準動詞を外し、残った述語動詞を数える。そのうえで、意味の通る組み合わせを考える。この順番を守っている答案は、たとえ語彙で分からない部分があっても、文全体の骨組みは合っていることが多く、部分点が残ります。

7. 確認問題

それぞれの文について、①述語動詞はどれか ②いくつあるか ③外した準動詞はどれかを決めてから、解答を開いてください。

(1) The proposal submitted last week surprised everyone on the committee.

解答・解説を見る

述語動詞は surprised の1つ。submitted は過去分詞で、The proposal を後ろから説明しています。直前に washas もないことが決め手です。

先週提出されたその提案は、委員会の全員を驚かせた。

(2) Learning to cook well takes far longer than most beginners expect.

解答・解説を見る

述語動詞は takesexpect の2つ。Learningto cook は準動詞です。つなぐ語は than の1つで、2 − 1 = 1 と数が合います。

料理をうまく作れるようになるには、たいていの初心者が思うよりずっと長くかかる。

(3) The city where my parents grew up has changed beyond recognition.

解答・解説を見る

述語動詞は grew uphas changed の2つ(has changed は全体で一つ)。つなぐ語は where の1つ。beyond recognition は前置詞句で骨格には入りません。

両親が育った街は、見分けがつかないほど変わってしまった。

(4) The number of students choosing to study abroad has fallen since the pandemic began.

解答・解説を見る

述語動詞は has fallenbegan の2つ。choosingto study は準動詞で、choosing to study abroad 全体が students を説明しています。つなぐ語は since の1つ。
主語は The number であって students ではないため、動詞が has と単数で受けている点も、構造判断の裏づけになります。

留学を選ぶ学生の数は、パンデミックが始まって以来減少している。

(5) What the researchers found challenged the assumption that memory works like a recording device.

解答・解説を見る

述語動詞は foundchallengedworks の3つ。つなぐ語は Whatthat の2つで、3 − 1 = 2 と合います。
主節の述語動詞は challenged で、その主語は What the researchers found というかたまり全体です。What の働きは第16講、この that(同格)は第12講で扱います。

研究者たちが見つけたことは、記憶が録音装置のように働くという前提をくつがえすものだった。

8. この講のまとめ

原理0 意味は構造の後に決まる。単語の意味を足しても文の意味にはならない
原理1 文には必ず述語動詞がある。述語動詞=主語と結びついて時制を担う動詞
手順 動詞らしい語を形で全部拾う → 時制を持たない形(to V・Ving・Vpp)を外す → 助動詞・be とのセットは一つと数える → 残りを数える
合図 動詞らしい語が2つ続いたら、前のほうが準動詞ではないかを疑う

この講で決めたのは「どれが述語動詞か」だけです。それでも、The letter written by her grandmother remained unopened のような文で立ち止まらなくなります。次の第2講では、外したほうの語――準動詞――が文の中で何をしているのかを見ていきます。準動詞は述語動詞ではありませんが、文の意味の大半を運んでいるのはむしろこちらです。

次の講へ

構造の取り方を、答案の形まで仕上げる

日本英語塾は担任制のオンライン英語専門塾です。この講座で扱う構造の判断を、実際の入試問題・英検の長文でどこまで速く回せるかは、添削を通してしか詰められません。担当講師が現状を診断したうえで、和訳・要約・英作文まで一貫して設計します。

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