第26講 共通関係と省略|消えた語を復元する|英文の原理

英文の原理|第III部 動かされた英文を戻す|第26講
共通関係と省略
― 消えた語を復元する

英語は、くり返しになる語を省きます。省かれた語を補えるかどうかで、並列の文が読めるかが決まります。

第25講で、等位接続詞が「同じ形のもの」を結ぶと確認しました。その並列では、共通する部分がしばしば省略されます。I can swim and (I can) dive. のように。この講では、省略された語を復元して読む技術を扱います。第3講の検算(つなぐ語が足りない=省略)とも直結する、第III部の中心テーマです。

1. 原理 ― くり返しは省かれる

原理 5・6

並列や比較で、前に出た語とくり返しになる部分は省略される。読むときは、省かれた語を前から補って標準形に戻す。補える語は、たいてい直前の並列の相手にある。

英語は同じ語のくり返しを嫌います。だから並列の後半では、共通する主語・動詞・目的語などが消えます。

Some students passed the exam, and others (passed the exam) failed.
She speaks French, and her brother (speaks) German.

省略された部分(かっこ内)は、前の並列の相手からそのまま補えます。補って初めて、後半が完全な文として読めます。

2. 省略の型

型 省かれるもの 例(かっこが省略)
主語の省略 共通の主語 He came in and (he) sat down.
動詞の省略 共通の動詞 I ordered tea; she (ordered) coffee.
助動詞後の省略 動詞句 She can drive, but I can't (drive).
to の後の省略 動詞(代不定詞) You may go if you want to (go).
接続詞後の省略 主語+be When (you are) in doubt, ask.
so / not が動詞句の代わりをすることもあります。Will it rain? — I think so (=it will rain)./I hope not (=it will not rain). これも「くり返しを避ける省略」の一種です。

3. 例文の解析

EX 1|動詞の省略(代動詞・比較)

She earns more than her manager does.

She earns more than her manager does (earn).
does
代動詞。earns のくり返しを避ける。=than her manager earns

彼女は上司より多く稼いでいる。

比較の than 節では、動詞が do/does/did で受けられます(第27講)。省略・代用は比較で頻出します。

EX 2|助動詞の後の省略

Some people accepted the change readily; others simply could not.

others simply could not (accept the change).
could not
後ろに accept the change が省略。助動詞だけ残る

その変化をすんなり受け入れた人もいれば、どうしても受け入れられない人もいた。

助動詞(can / could / will / do)の後ろの動詞句は省略できます。助動詞で文が終わっていたら、前から動詞句を補います。

EX 3|to の後の省略(代不定詞)

She didn't join the trip, though she had wanted to.

though she had wanted to (join the trip).
to
代不定詞。to join the trip の to だけ残す

彼女はその旅行に参加しなかった。参加したかったのだけれど。

to だけで文が終わっていたら、前から不定詞の中身を補います(代不定詞)。want to / would like to / try to の後ろで頻出。

EX 4|接続詞の後の〈主語+be〉省略

Though exhausted, the team continued working through the night.

〔Though (they were) exhausted〕, the team continued working through the night.
Though exhausted
=Though they were exhausted(主語+be の省略)

疲れ果てていたが、チームは夜通し働き続けた。

when / while / though / if の後ろの〈主語+be〉は省略できます。接続詞の直後に形容詞・分詞・前置詞句が来たら、〈主語+be〉の省略を補います。

EX 5|共通の目的語(後方の省略)

He designed, and his team built, the entire system in six months.

He designed, and his team built, the entire system in six months.
共通の目的語
the entire system は designed と built の両方の目的語

彼が設計し、彼のチームが構築した。そのシステム全体を、6か月で。

コンマで挟まれた and his team built は挿入的で、the entire system が両方の動詞の共通目的語。後ろに一度だけ置かれた要素が、前の複数の動詞に共通する形(共通関係)です。

EX 6|入試レベル

Some critics praised the novel for its ambition; others, for its restraint; and a few, for neither.

Some critics praised the novel for its ambition; others, (praised the novel) for its restraint; and a few, (praised the novel) for neither.
省略
2つめ・3つめで praised the novel が省略。コンマがその跡

その小説を、その野心ゆえに称賛した批評家もいれば、その抑制ゆえに称賛した者もおり、そしてどちらでもない理由で称賛した者も少数いた。

コンマの後に others, for … と続く形は、共通の動詞句(praised the novel)が省略されている合図。コンマが省略の跡です。復元すれば、3つの並列が読めます。

4. つまずきやすい形

(1) 助動詞・to で文が終わったら、前から補う

I can't (do it), but she can (do it)./I'd love to (go). 助動詞や to で文が終わっていたら、省略された動詞句を前の並列の相手から補います。

(2) 接続詞+形容詞/分詞は〈主語+be〉の省略

If necessary(=if it is necessary)、When asked(=when he was asked)、While reading(=while I was reading)。接続詞の直後に主語+動詞が無ければ、この省略を疑います。

(3) コンマは省略の跡のことがある

EX 6 のように、並列でコンマだけが残り、共通の動詞句が消えることがあります。コンマの後に、前と対応する要素(前置詞句など)だけが来ていたら、間の動詞句の省略を補います。

(4) so / not / do so で動詞句を受ける

I think so.(=そう思う)/If not, …(そうでなければ)/She asked me to leave, and I did so.(=そうした)。so / not / do so は、前の内容全体を受ける代用表現です。

5. 入試ではこう出る

和訳問題では、省略された語を補って訳すことが問われます。than her manager does を「上司がするより」ではなく「上司が稼ぐより」と、省略された動詞を補って訳せるか。to や助動詞で終わる文も、省略部分を訳に反映させます。

読解では、共通関係(EX 5・EX 6)で「一度しか書かれていない要素が、複数の動詞に共通する」形を見抜けるかが、複雑な文の理解を左右します。省略を復元して標準形に戻す――この習慣が、削られた英文を正確に読む力になります。

6. 確認問題

各文で①どこに何が省略されているか ②補った標準形を言えるようにしてから開いてください。

(1) He applied for three jobs but was offered none.

解答・解説を見る

主語 He が省略。=but (he) was offered none。but が2つの動詞(applied/was offered)を結び、主語は共通。

彼は3つの仕事に応募したが、どれも採用されなかった。

(2) You can stay here if you like, or leave if you prefer.

解答・解説を見る

if you like =if you like (to stay)/or (you can) leave。助動詞 can の後ろの動詞句が2つめで省略。「〜すればここに残ってもいいし、〜なら出て行ってもいい」。

よければここにいてもいいし、そのほうがよければ出て行ってもいい。

(3) When treated with respect, most people respond in kind.

解答・解説を見る

〈主語+be〉の省略。=When (they are) treated with respect。接続詞 When の直後に過去分詞が来ているので、〈主語+be〉を補う。「敬意をもって扱われると」。

敬意をもって扱われると、たいていの人は同じように応じる。

(4) She wanted to apologize but didn't know how to.

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代不定詞(to の後の省略)。=didn't know how to (apologize)。to だけ残して apologize を省略。「どう謝ればいいか分からなかった」。

彼女は謝りたかったが、どう謝ればいいか分からなかった。

(5) Some argued for the reform, others against it.

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動詞句 argued の省略(共通関係)。=others (argued) against it。コンマが省略の跡。「賛成の論を述べた者もいれば、反対した者もいた」。

その改革に賛成の論を述べた者もいれば、反対した者もいた。

7. この講のまとめ

原理5・6 くり返しになる共通部分は省略される。復元して標準形に戻す
補う場所 省かれた語は、前の並列の相手にある
助動詞・to で終わる 後ろの動詞句が省略。前から補う
接続詞+形容詞/分詞 〈主語+be〉の省略(When asked=when he was asked)
コンマ 共通の動詞句が省略された跡のことがある

次の第27講からは、省略が最も体系的に現れる比較に入ります。than の後ろで何が省略され、比較の対象がどう復元されるか。第III部の山場です。

次の講へ

消えた語を補って、標準形で読む

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